2020年8月25日火曜日

関西で絶大な人気を誇る上沼© NEWSポストセブン 提供 関西で絶大な人気を誇る上沼  7月24日、“西の女帝”上沼恵美子(65才)が司会を務める人気トークバラエティー『快傑えみちゃんねる』(関西テレビ)の幕引きは、あまりにあっけなかった。



 
同番組は、1995年に放送を開始。平均視聴率は12.6%。2018年には、「関西人1万人が選ぶカンテレ人気番組ベスト20」で堂々の第1位を獲得した。関西で絶大な人気を誇る長寿番組だったにもかかわらず、1056回目のエンドロールでのみ、突然終わりを告げたのだ。
その裏には、同番組に2015年からレギュラーとして出演しているお笑い芸人・キングコング梶原雄太(40才)への“公開パワハラ”があったのではないかといわれている。
 上沼の梶原に対する場が凍りつくほどの口撃があったとされ、10月での“卒業”を打診され、半ば“逆ギレ”する形で、番組は打ち切られることとなったというのだ。「あんたこの番組に途中から来た子やんか。最初からブッキングされた出演者とちゃうやん」などの言葉に番組スタッフは凍り付いた。精神科医の片田珠美さんはこう語る。
「上沼さんは、梶原さんのことを実の息子のようにかわいがっていたそうですが、だからこそ、“これだけ面倒を見てやったのだから、恩を忘れず、私の言うことを聞くべき”と思い込んでいるのでしょう。パワハラ加害者に共通して見られる考え方です」
 そして、年を取るごとに怒りっぽくなったり、イライラしやすくなるのは自然の摂理だ。精神科医の和田秀樹さんが言う。
「年を取るとさまざまなホルモンが減少し、セロトニンという伝達物質の分泌量も低下します。セロトニンは、恐怖や驚きを司るノルアドレナリン、快楽や喜びを司るドーパミンなどの量をコントロールして、精神を安定させる働きがある。女性は、中高年になるとセロトニンの減少でイライラしやすくなるので、怒りっぽくなる可能性があります」

“女らしく”より“人間らしく”

上沼のようなタイプもいれば、年齢を重ねてもうまく立ち回る「愛されオバさん」も存在する。
 7月5日の都知事選で歴代2番目の366万1371票を獲得し、2位に280万票以上の大差をつけた文句なしの圧勝劇を繰り広げた、小池百合子東京都知事(68才)だ。武蔵大学教授で社会学者の千田有紀さんはこう言う。
「小泉純一郎氏の首相時代は、首相官邸に手作り弁当を頻繁に届けていたといわれ、時の権力者に媚を売って、“理想の女性らしく”渡ってきました。女性にいちばん嫌われそうなタイプだったのに、年齢を重ねたいまでは、女性からの支持も厚い。いまのところ、“愛され女帝”といえるでしょう」
 国会議員に立候補した当時は「選挙もハイヒールとミニスカートで通す」と宣言し、当選後も国会でミニスカを通していた小池都知事。コロナ禍で多忙を極めているはずの現在も、会見のたびに注目されるデザイン性のあるマスクを使い分け、マスクをはずして会見に臨んだ際には、「ひょっとして、関係ないけど、私、口紅忘れてる?」と報道陣に問いかけて、笑いを誘った。
「ステイホーム」「ソーシャルディスタンス」と、強い主張をしつつも、言葉尻は常にどこかやわらかく、相手の下手に出て、美意識も忘れない。
 都庁内部からは、「石原都政時代より恐ろしい。決して異論を認めない」という声もあり、いつ“上沼化”するかはわからない。しかし、現時点では、「愛されオバさん」の模範例だといえそうだ。
 そしてもし“愛されオバさん”になりたいなら、「目指すべきは“美魔女”ではない」と、前出の和田秀樹さんは言う。
「若い頃の体形を維持しようとダイエットに励むと、セロトニンが減少することがわかっているからです。“年を取っても美しさを保っていれば大切にされる”というのは幻想です。“もう若くないから”と自分を卑下したり、反対に“女性を尊重しない世の中や男性が悪い”などと決めつけないこと。充分な栄養を摂り、笑顔を絶やさないことで、人にも自分にも優しくなれるし、人に愛される女性になれるのです」
 もちろん、優しくあることと、すべてを受け入れて許すことは異なる。横浜国立大学教授で社会学者の江原由美子さんはこう語る。
「日本に限らず、女性の不幸なところは、年齢的に成熟していくときに、いい“お手本”があまりないところです。せいぜい主婦のモデルとしての“上品な奥さま”という理想形くらいしかない。社会に出て男性と肩を並べて生きている女性や、ハッキリした主張を持っている女性は、どうしても“できる女=冷たい女、かわいげがない、怖い”という印象を持たれてしまいがちです。
 アメリカ史上初めて女性で主要政党の指名大統領候補となったヒラリー・クリントン氏(72才)も、“冷たい女”という印象が拭えず、2016年の大統領選挙でトランプに負けてしまいました」
 男性であるトランプ大統領は、相手を罵ることで「力強い」と評価され、女性のクリントン氏は、口調が強くなっただけで「冷たい」という評価を受けた。
「しかしいまの日本を支えているのは女性です。主婦も家事をやりながら働けといわれ、おまけに介護もある。日本の女性は、もっと自信を持っていいし、もっと主張していい」
 女性は「嫌われオバさん」と「愛されオバさん」に分かれているのではない。がまんを強いられた結果、爆発させてしまったか、うまく吐き出すことができたかの違いでしかない。うまく吐き出す術を身につけられれば、「嫌われオバさん」になる道は回避できる。かつての上沼恵美子がそうであったように。
※女性セブン2020年9月3日号

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