2020年8月26日水曜日

銀行振込手数料 透明化で引き下げに努めたい


 銀行の振込手数料の引き下げに向けた動きが本格化している。デジタル時代に合わせた適正な料金体系を、早期に実現してもらいたい。3メガバンクなど5行は、振込手数料を引き下げるため、新たな送金システムを開発すると発表した。キャッシュカードで買い物ができる「Jデビット」というシステムを活用する方向だ。
 地方銀行やスマホ決済事業者などに参加を呼びかけるという。
 銀行の振込手数料は以前から割高との批判が出ており、引き下げに努めるのは妥当である。
 ただ、新システムは個人間の数万円以下の小口送金が対象で、高額決済は想定していない。
 抜本的な改革には、銀行間の送金を担う既存の「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の運用見直しが不可欠だ。
 全銀システムには国内のほとんどの金融機関が接続している。銀行間の送金手数料は3万円未満で117円、3万円以上は162円で、40年以上変わっていない。
 問題なのは、その料金の根拠が不透明なことである。
 全銀システムは、24時間365日、即時入金が可能で安定性が高い分、コストがかかるとされる。運営する銀行業界は、費用の内訳を明らかにしていない。
 公正取引委員会は4月、事務コストを大きく上回る水準だとして、銀行間の送金手数料の是正を求める報告をまとめた。長年の慣行を改め、下げていくべきだ。
 利用者向け振込手数料は、各銀行が送金手数料に経費や利益などを上乗せして決めている。ある大手行では、他行宛てにインターネットで振り込む場合、3万円以上で440円(税込み)となる。
 IT化で窓口の事務は減り、サービスの省力化が加速している。送金手数料とともに引き下げの余地が大きいのではないか。利用者の理解を得ることが大切だ。
 振込手数料の高止まりは、キャッシュレス化を妨げているとも指摘されている。
 「ペイペイ」などスマホ決済の事業者は、代金を加盟店に支払う際に銀行振り込みを使っており、負担が重い。少額の決済が頻繁に行われるためだ。
 政府は今年の成長戦略で、IT企業も使える低コストの決済システムの新設を重点課題に位置づけた。銀行の協力が必要だ。
 キャッシュレス化は現金管理の手間などが省ける。銀行は、利用者の負担軽減と経済全体の効率化に資する改革を進めてほしい。

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