【上海=南部さやか】中国で今月、習近平 国家主席が食べ物の浪費を禁じる号令をかけ、全国的な節約キャンペーンが始まった。新型コロナウイルスの感染拡大や米中対立の激化など、食料供給の不安定化につながる事態が続くなか、食の安全保障の強化に国民も動員して取り組む狙いとみられる。 国営新華社通信が11日に伝えた習氏の重要指示によると、習氏は「飲食物の浪費を見ると心が痛む。(コメの)一粒ずつに(農民の)苦労があるのに」と述べ、食べ残しを批判した。「わが国は毎年豊作だが、食料の安全保障に危機感を持つことが必要だ。新型コロナウイルスの影響が警鐘を鳴らした」とも語り、浪費を禁止する法律の制定や、飲食店の監督強化を指示した。
中国では宴席などで食べきれない量の料理が出され、食べ残すことが習慣化している。中国中央テレビ(電子版)によると、2015年の都市部の飲食店の食べ残しは1700万~1800万トンに達した。3000万~5000万人の1年間の食料に相当する量だという。
習氏は1期目の政権が発足して間もない13年にも同様の「食べ残し禁止令」を出していた。当時は党や政府の幹部らの腐敗撲滅が主目的だった。
だが今回は、将来の食料供給に対する危機意識を一般にも周知させることに重点が置かれているようだ。
新華社通信は17日、中国の米や麦などの主食の自給率は98%を超えるとしつつ、「新型コロナの世界的な感染拡大は食料の輸入の不確実性を高めた」と指摘した。米中対立の更なる悪化によって両国経済のデカップリング(切り離し)が進み、食料の輸入が滞る事態も想定しているのは間違いない。香港紙・明報は12日、北京の専門家の話として、米国は金融制裁を発動し、中国企業にドル決済をできなくさせることで「国際社会での中国の食料購入を妨げられる」との見方を伝えた。
習氏の11日の発言を受けて始まった節約キャンペーンは各地で早くも動き出している。湖北省武漢市などの飲食業協会は、客の人数より1~2品少なくしか料理を注文できない仕組みを導入した。江蘇省や重慶市などの公務員向け食堂では、食べ残しをチェックする監督員を置いた。
大食い動画も
動画共有アプリで「大食い」を自慢する動画も、浪費を助長するとして投稿が禁止された。ネット上では、「浪費が犯罪になり、食べることも管理するのか」といった反発の声も出ている。
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