2020年8月6日木曜日

ダイヤモンド・プリンセス<5>なぜ感染拡大 検証必要

送られてきたメッセージとピンバッジをもつCさん。「再び船に乗りたい」と語る
送られてきたメッセージとピンバッジをもつCさん。「再び船に乗りたい」と語る

 海で働く以上、自分たちよりお客様の命が優先されるのは当然。でも、体調が悪くなった乗員を放っておいていいはずがない――。

 クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」に乗った日本人の男性乗員Cさんは今も、そんな思いがぬぐえない。

 Cさんは、新型コロナウイルスの集団感染で、乗客の自室待機が始まった2月5日頃から、船内のコールセンター業務などを担当した。体調不良を訴える乗客や乗員からの電話に応対する。「熱がある」「早く診察してほしい」――。電話は鳴りっぱなしだった。

 船内で支援活動をする医師に連絡して診察してもらい、必要に応じてPCR検査をし、陽性ならば下船させる流れだった。ただ、乗員は20~30歳代中心だが、乗客は8割が高齢者。そのせいか、乗員への診察は滞りがちになっていた。

 「医師はいつ来てくれるんですか」。Cさんのもとには、助けを求める同僚の声がたくさん届いた。「なんとかしてほしい」。政府の船内対策本部に訴えると、同14日から本格的に往診が始まった。

 多くの乗員は、2人1組の相部屋で寝起きする。Cさんのルームメートも、乗客の自室待機が始まって数日後、37度を超える発熱とのどの痛みを訴えた。感染している可能性があり、自室を出ないよう命じられた。

 自分が感染を広げることになるかもしれない――。Cさんは不安に襲われた。自分は移動できる部屋もなく、同室のままその後も仕事に出ざるを得なかったからだ。PCR検査で陰性の結果が出て初めて、ホッと胸をなで下ろした。

 船を下りたのは2月下旬。その後、国が用意した埼玉県内の施設に約2週間、滞在して様子を見たうえで自宅に戻った。

 5月中旬には船会社から手紙が届いた。船内での活動に感謝する経営者からのメッセージとともに、記念のピンバッジが入っていた。誇らしくて、また船で働きたい気持ちになった。

 だが、疑問が消えたわけではない。乗員の感染防護策は、マスクくらいだった。手薄な防護のまま、陽性だった乗客へのサービスにも当たっていた。いつもの制服にマスクだけの自分たちと、白い防護服姿で活動する自衛官や災害派遣医療チーム(DMAT)。いずれも同じ場所を歩いている。大きな落差があった。

 Cさんは、「なぜ船内で感染拡大が起きたのか。再発を防ぐためにも、日本政府や船会社は検証すべきではないか」と問いかけている。(加納昭彦)

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