2020年9月5日土曜日

例年、台風や豪雨で甚大な被害が出ています。各家庭ですべき対策とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン 提供 例年、台風や豪雨で甚大な被害が出ています。各家庭ですべき対策とは?(写真はイメージです) Photo:PIXTA 例年、巨大台風が列島を襲い、甚大な被害が出ている。また、“特別警報級”の勢力になるといわれている台風10号が九州・沖縄地方に接近している。自然の脅威を前に、どのような対策を講じるべきなのだろうか。自宅でチェックしておくべきポイントやコロナ禍も踏まえた避難の原則について、防災システム研究所・山村武彦所長が解説する。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部 笠原里穂)

まずはハザードマップで
正しくリスクを確認

この10年間を振り返ると、毎年大雨が降り、各地で災害が起こっています。異常気象だといわれますが、今や“異常気象が常態化”しているような状況です。
 では、そうした災害のリスクに対してどのような備えを講じておくべきでしょうか。

まず一つは、ハザードマップで自分が住んでいる地域の危険性を把握しておくことです。その際、「2015年以降に作られたハザードマップかどうか」を確かめることがポイントです。
 15年5月に、水防法が改正されました。法改正以前の洪水ハザードマップは、100~200年に一度程度の雨を基準にしていました。しかし15年以降、各自治体は洪水浸水ハザードマップを大幅に改定。1000年に一度レベルの雨、つまり、想定し得る最大規模の豪雨を基準に策定されることになったのです。
 これによって、以前は「浸水の恐れなし」とか「浸水してもせいぜい50センチ程度」だといわれていたところが、場所によっては3メートルになっているなど、浸水想定区域が大きく変わっています。昔のハザードマップを見て、うちは大丈夫と思っていてはダメ。市区町村が出している新しいハザードマップを見て、自分の家がある場所が安全かどうかをまず確認することが重要です。
 また、ハザードマップの見方には、2つのポイントがあります。1つは、「家屋損壊等氾濫想定区域」にあるかどうかということ。この区域は、河川の氾濫が起こったときに家屋が流される可能性がある場所を指しています。つまり、この区域に住んでいる人は、大雨で洪水警報が出たらただちに避難しなくてはなりません。
 もう1つは、浸水の深さと浸水継続時間です。浸水継続時間とは、浸水深が50センチ以上となってから50センチ未満に水が引くまでにかかる時間のことを指します。場所によっては7日ほどになるところもあります。自分の家が浸水しなくても、周辺地域一帯が孤立してしまうリスクもあるのです。
 まずはそうしたリスクを、ハザードマップで調べてみることが重要です。自分の地域のハザードマップが手元になければ、国土交通省のハザードマップポータルサイトを見てみましょう。

ハザードマップでは見えない
「逆流浸水」の危険性

しかしながら、ハザードマップでは分からない浸水の危険もあります。
 昨年10月に東日本に甚大な被害をもたらした令和元年東日本台風(台風第19号)により、タワーマンションが浸水したという報道を覚えている方も多いでしょう。私はその現場である武蔵小杉駅周辺に行ってみたのですが、通常であれば浸水するような場所ではありませんでした。では、なぜ浸水してしまったのか。
 多摩川の水が排水管から逆流してきて、町中で噴出していたのです。これが、「逆流浸水」です。
 逆流浸水が起こり得る場所は、ハザードマップでは分からないのですが、一つ言えるのは、周辺の土地に比べて低い場所が危ないということです。海抜が高くても、周りと比べて低いところは要注意。また、川のそばもこうした現象が起こる可能性があります。
 逆流浸水への対策としては、土のう袋や水のう袋を用意しておくのが有効です。ごみ袋を二重にしたところに水を10リットルほど入れて、ある程度空気が抜けるようにした上でしっかりと口を結べば、各家庭でも簡単に水のう袋を作ることができます。これを、お風呂場やトイレなどの排水溝の上に置いておきましょう。

コロナ禍での避難
チェックすべきポイントは?

洪水の危険性がある場合の避難の原則は2つ。1つは、早めに「水平避難」をすること。外が明るく、冠水していないうちに、浸水の可能性がある危険な場所から避難しましょう。一方で、避難しようと思ったら道路が冠水していて危険である場合には「垂直避難」。自宅の2階など、高いところに避難することです。
 もっとも、ハザードマップや最新の情報などを確認し、自宅が安全な場所にある場合は自宅にとどまる「在宅避難」が大原則です。
 避難に関しては、今年は新型コロナウイルスの感染対策も大きな課題の1つです。感染リスクを低下させるためには、指定避難所に行くという選択肢だけでなく、「分散避難」を考えてみましょう。
 分散避難とは、近くの安全な場所にある親戚や友人の住まいに避難することです。あるいは、明るいうちに大雨になる前であれば「車中避難」をして、車で安全な場所に移動することを考えてもよいでしょう。
 また、政府からの通知により、コロナの状況に対応するために自治体は避難所を増やしています。
 今までの避難所は、1人当たりの専有面積がせいぜい1.2~2平方メートルくらいだったのですが、コロナ対策の観点からいうと4平方メートル以上はないと3密抑制にはなりません。必要な距離を保とうとすると、通常の半数しか収容できないことになります。そのため、避難所の数を増やそうとしているのです。
 これに伴い、避難場所が昨年から変わっている可能性もあります。自治体のウェブサイトで最新情報を確認しておきましょう。

もしもに備えて用意すべき
避難所で便利なあるものとは?

もしもの時のために、用意すべきものの備蓄の量や内容を確認しておくことも重要です。大雨を想定し、防水の懐中電灯やラジオは用意しておきましょう。また最低限度の水、食料、そして衛生管理上、予備マスクや体温計、消毒薬を持っておくことも必要です。
 また、今年7月に豪雨被害を受けた熊本の被災地を回った中で、各家庭で準備しておくとよいと特に感じたものはビニール袋です。濡れたものを入れる袋として活用できるのはもちろん、避難所で食べ物が配られてもしまっておくところがないといったときにも役に立ちます。大中小、いろいろな大きさのものがあるとよいでしょう。
 携帯電話やスマートフォン、そして濡れたり汚くなったりすると使いものにならないマスクなどを濡らさないためにジッパー付きの保存袋も用意しておきたいですね。
 いざというときのためには、まず自宅のリスクを把握すること。その上で、家族で話し合い、避難経路や準備の内容を確認し、外が明るいうちに避難することが重要です。できれば一度か二度、雨の日に避難場所まで歩いてみるとリスクを把握できるのでおすすめです。

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