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──王位戦の決着局になった第4局の初日の封じ手に、藤井二冠が選択した8七同飛成という手を驚く向きが多かったです。
──棋聖戦第2局で話題になった、渡辺さんの攻めに対する3一銀という受けも、AIで6億手読んで初めてわかる最善手ということで話題になりました。
あの手は発見しづらいけれど、元々受けが好きな人であれば見つけられるかもしれないという手です。ただ、今回の棋聖戦で言えば、僕は1局目は鋭い終盤戦の攻めで負けて、2局目は逆に受けの手で負けるという展開になりました。攻めと受けを両方できるのが彼のすごいところ。攻めか受けかというのは棋風なので、受けの人は受けの手から考え始めると正解のゾーンにたどり着く可能性が高くなる。逆に、本来攻めなきゃいけない場面で受けの手を考えてしまうので、そういう場合は正答率が下がる。ところがその真逆の展開を両方やっちゃうのが彼の特筆すべきところなんです。こんなこと普通できません(笑)。
──高校生にして追われる立場になり、周囲が藤井二冠目掛けて対策を講じることになります。
対戦相手になれば、そうなりますね。しかし目に見えた弱点はないので、その人なりに特化した作戦をどう練るか。あとは相手に毎回「負けてもともと」みたいに気楽にぶつかってこられるときついでしょうね。全部ストレートのタイミングで思い切りバットを振られて、当たればラッキー、三振して当たり前みたいな感じで。そういうところで、対戦相手にとって彼が「格上」になったことでどうなるかぐらいでしょうね、懸念材料というほどでもない。
──渡辺名人とはこれから何年も名勝負を繰り広げていく間柄に突入したわけですが、彼に対して突破口になるような秘策はありますか。
いや、今のところないです。だってまだ考えてないですもん(笑)。変な話、対戦相手にならない限り考えることはないです。そんなことを考えるなら、次の対戦相手の研究をします。
──しかし、非常に面白くなりましたね、将棋界。
見てる人はそうでしょうけど、やってる方は大変ですよ(笑)。
──失礼しました。最後に新名人に今後の抱負を。
個人的な目標はすぐには浮かびませんが、36歳という年齢を考えればタイトル戦に出られるのもそう長くはないので、その中で藤井さんとの戦いでもどういうふうに指していくべきか。ただ、自分としては今、いい時期にあるのでこの何年かは頑張りたいと思います。いつからピークと見るかは難しいですけど、一応まだそれが続いている。タイトル戦に出られなくなればピークも終わりですけど、正直2年先がどうなっているかわからない。今これだけやっているから、5年間は安泰という世界ではありませんから。
(構成/編集部・大平誠)
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