2020年9月4日金曜日

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 山口誓子は家のなかを、きょろきょろと見回したのかもしれない。<こほろぎの鳴くやいづこの畳にて>◆住人の知らないうちに建物に忍び込むのはこの虫の得意にすることらしい。最近、近所のコンビニの店長さんからこんな話を聞いた。秋になるとコオロギがいつのまにか来店して、サンドイッチや弁当を並べる棚の下にすみつくのだという◆たまに店長さんと立ち話などをしていると、大手流通企業の大看板の下に個人経営の店主の顔がのぞく。そうした面を尊重すべしということだろう。公正取引委員会がコンビニ8社に厳しい報告書をまとめた◆24時間営業を強制したり、時短の要請を拒絶したりすることは、独占禁止法が禁じる「優越的地位の乱用」の可能性があるとの見解である。長時間の労働を余儀なくされ、店主の6割が業務時間を「つらい」と答えたという。仕入れる商品の種類や数をめぐり、本部に強制されていると不満を示す店が多いことも指摘された。改めるべき問題は本部側にありそうだ◆ちなみに先のコオロギの来るお店は数か月前、時短営業を始めた。以来、店長さんの顔色がいい。

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