2020年9月4日金曜日

井上咲楽(いのうえ・さくら)/1999年10月2日生まれ、20歳。栃木県出身。テレビ東京系「おはスタ」、TOKYO MX「バラいろダンディ」などでレギュラー出演、「月刊エンタメ」(徳間書店)で国会議員対談連載など。 写真提供:ホリプロ© ダイヤモンド・オンライン 提供 井上咲楽(いのうえ・さくら)/1999年10月2日生まれ、20歳。栃木県出身。テレビ東京系「おはスタ」、TOKYO MX「バラいろダンディ」などでレギュラー出演、「月刊エンタメ」(徳… 安倍晋三首相が辞任を決めたことで、次の首相を決める自民党総裁選に向けた動きが活発になっている。20歳ながらも多くの政治家に取材経験を持つ個性派美人タレントの井上咲楽さんに、ポスト安倍を巡る争いをどう見るか話を聞いた。(聞き手・構成/ダイヤモンド編集部 松本裕樹)

安倍政権が
長く続いた理由

私が政治に興味を持ったのは数年前、スマホいじりながらテレビを見ていたとき、「ヌカガハの分裂」という言葉が耳に入ってきて、「ヌカガハが分裂するって何だろう?ミジンコの細胞分裂みたいなことかな」と思って調べたのがきっかけです。
 調べてみたら、青木幹雄さん(元参院議員会長)など、いろいろなキャラクターの政治家のオジサンたちがパワーゲームみたいなことをやっていました。政治や社会に疑問を持ったというより、政治家とそれを取り巻く人々の動きが面白いと思ったのが、政治にはまった一番の理由です。

8月28日の安倍首相の辞任会見はリアルタイムで見ました。会見での安倍首相は疲れ切っていて、なんだかすごく小さく見えました。
 私が物心ついてから、首相が変わるのは初めてのこと。ポスト安倍が誰になるのかは、政治に興味を持ってからずっと関心事でした。
 多くの政治家の中で安倍さんのキャラって、あまり濃くはないですが、それでも7年8カ月も政権が続いたというのは、安倍さんを支える周囲の力があったからこそ。そういう意味では、すごい政治家なのだと思います。
 もう1つ、安倍政権が長く続いた理由を挙げるとすれば、政策実現の期待感を抱かせたことだと思います。憲法改正、拉致問題、北方領土返還なども、結論は出ませんでしたが、例えば北方領土問題ではプーチンさんと会談したり、2島先行返還の話が出るなど、盛り上がりました。
 若い人たちには安倍さんを批判する人ってそれほど多くない気がします。
 私たちの世代にとって、今の日本は良くも悪くもありません。自分たちの生活が脅かされていることはなく、政治に興味を持たざるを得ない状況ではない。社会に訴えたいという差し迫った何かがあるという人は、少なくとも私の周りの同世代にはいない。だから、安倍さんを批判する声もないし、一方で褒めたたえる声も聞こえてきません。

今回の総裁選は
新官房長官に注目

今回の自民党総裁選については、正直に言えば、何の面白みもなくなってしまいました。
 日本の首相を決めるわけですから、いろいろな人が出馬してくれないと面白くないです。菅さん(官房長官)、岸田文雄さん(政調会長)、石破茂さん(元幹事長)の3人だけではありきたりすぎる。
 河野太郎さん(防衛相)、茂木敏充さん(外相)、加藤勝信さん(厚生労働相)、下村博文さん(選挙対策委員長)、野田聖子さん(元総務相)などが、出馬を巡って競い合い、政策もブラッシュアップしてほしいなと思っていたのですが、多くの派閥が一気に菅さんを支持し、結果はほぼ見えてしまいました。
 菅さんが首相だと、安倍さんのやり方を継承するだろうから安心感はあります。
 なじみやすい外見だし、まったく私利私欲や首相になる意欲を見せず、「参謀タイプです」みたいな感じでやってきて、気づいたら次期首相に一番近い場所にいる。
 しかし、国会議員になった人で首相を目指さない人は一人もいないと思っています。
 もちろん、安倍さんが体調を悪くされるという異例の事態だからではありますが、第1次政権で起きたことが再び起きる可能性はゼロではありません。そこまで計算していたとしたら、菅さんって実は相当な戦略家なのかなとも思います。
 いずれにせよ、来年の総裁選では党員投票が行われるでしょうから、今回の総裁選ではとがったことをせず、出馬はしないでおこうという判断もあって、出馬する人が少なかったのでしょう。
 であれば、今回の総裁選は、来年の総裁選を見据えて見ると面白いのではないでしょうか。来年の総裁選へ向けたスタートラインに誰が並ぶのか。そこから来年の総裁選を予想するのです。
 おそらく菅さんが率いる新内閣で、どの派閥の議員がどれぐらい入閣するのかも興味深いですが、私が特に注目しているのは、誰を官房長官にするかです。その人が、その次の首相になる可能性が高いのかなと思っているからです。

来年の首相候補である
石破氏と河野氏の違い

では来年の首相としてふさわしいのは誰なのでしょうか。
 マスコミ各社の世論調査を見ると、石破さんの人気が圧倒的です。
 石破さんは会って話すとすごく引き込まれる人です。私は今までいろいろな政治家に取材させていただきました。質問に対して回りくどい回答ではぐらかす人も多いのですが、石破さんはストレートに答えてくれるし、答えられない質問であれば「うーん、どうだろうね」とわかりやすく拒否する。
 石破派の議員の人たちって、何でも発言していいみたいな、無派閥っぽい雰囲気を感じます。私のような政治に詳しくない者にも、丁寧にわかりやすく話してくれる人が多いのは石破派です。
 ただ、石破さんが首相になったら外交面は大丈夫なのかなと心配もあります。
 石破さんって、会食などをあまり積極的にはしないし、国会議員の友達があまりいないと聞いています。
 国会議員に友達を作れない人が、果たして外国の首脳と信頼し合える関係を築けるのかなと思ってしまいます。
 河野さんも首相のポストに近い人だと思っています。
 理由は3つあります。
 1つ目は情報発信力です。
 SNSを活用してさまざまな情報を発信しているのが、すごく面白い。河野さんがエゴサーチ(ネット上で自分の名前などで検索し、他人からの評価を調べること)して、自分について触れているコメントを見つけ、それを引用ツイートしたりしている。文字だけじゃなく、モールス信号で書かれたものまで見つけて、それにツイートするなど、話題作りもうまい。
 SNSって、本音や本性があらわになりやすいメディアなので、政治家が使うのは難しいし、そこでの発言は問題化しやすいと思います。
 実際、安倍首相の辞任に関連して、立憲民主党の石垣のりこさんが「大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」とツイッターに投稿して批判され、謝罪しましたよね。
 もちろん河野さんのツイートも、物議をかもすことはあるのですが、本格的な炎上にならないところは流石という気がします。
 政治家の中にはまったく面白くない冗談をコメントする人もいるけど、河野さんはギャグのセンスがある。私もタレントとして、勉強させてもらっているぐらいです。
 河野さんのSNSを見ていると、すごく節度がある人だと感じます。
 2つ目は政治家としての柔軟さです。
 河野さんって、昔は政治家としてかなりとがっていたと聞きます。石破さんも自民党内でかなりとがっている印象があります。でも、河野さんは党や派閥組織に従い、丸くなるところは丸くなったように思います。
 一方、石破さんはとがり続けた結果、今では自民党内で孤立している。どちらも政治家としての一つの在り方なんだろうなと思います。
 まっすぐで信念を貫く人が出世できないというのは、何も政治の世界に限らず、おそらく会社などさまざまな組織でも同じようにある。どの世界にも“石破派”はいるのだと思います。
 河野さんのように組織の論理に柔軟に対応する人もいるべきだし、かといって、全員が河野さんみたいだと面白くない。だから石破さんみたいな人がいると、そこに政治家への希望を見いだす人もいるだろうし、だからこそ政治が面白くなるのではないでしょうか。
 3つ目は英語力。
 昨年9月、環境相の小泉進次郎さんが国連気候行動サミット時のニューヨークでの記者会見で、「気候変動問題に取り組むことはクールでセクシー」と発言し、「セクシー」の使い方が話題になりましたよね。
 この時、動画などで政治家の英語力を調べたことがあります。その結果、英語力が高かったのが河野さんと茂木さんでした。河野さんって、面白いだけじゃないんです。

国会傍聴が
なぜ面白いのか

将来の首相候補として、河野さんと同じぐらい期待しているのが茂木さんです。
 国会傍聴が好きで、時々行くのですが、ペーパーを読んでいる政治家が多い中、茂木さんは自分の言葉でちゃんと答弁している。
 安倍さんの外交の評価ってすごく高いですけど、茂木さんが首相だったら、英語も得意だし、安倍首相とは違うやり方で、海外首脳とかなりタフな交渉もやってくれるんじゃないかなと期待してしまいます。
 ただし、先日の外国人記者とのやりとり(8月28日の外務省の定例記者会見で外国人女性記者の質問に対して「日本語わかっていただけますか」などと答えたことが「差別的」として問題になったこと)はイライラしすぎだったので、もっと冷静ではいてほしいのですが。
 誰が首相になったとしても、年金、医療、介護などの社会保障にかかわる財政負担の在り方など、10年、20年後の負担を具体的に考えてくれる人であってほしいです。
 こうした長期的な課題を自分事としてしっかりと考えてくれる政治家、そういう意味では、若い政治家にもっと頑張ってもらいたいとも思います。
 国会を傍聴すると、テレビ画面では伝わらない雰囲気もわかり、すごく面白いです。
 話している内容がわからないことはいろいろとありますが、答弁のやりとりや、野党のヤジへの態度とかを見ていると、人柄が伝わってきます。政治を詳しく知らない人でも楽しめますよ。
 国会議員を生で見られるし、議論していることは国として決めるべき重要なこと。それを無料で見られるんですから、是非、若い人にも一度行ってみることを勧めたいです。
 話は飛ぶのですが、私が国会傍聴と同じぐらいはまっている趣味が昆虫食です。
 昆虫の味って、見た目からは想像できないものが結構あります。
 例えばタガメの味は洋梨のラ・フランスに近い。私はフルーティーな風味を生かすため、タガメの胸肉のような部分を取り出し、ヨーグルトに混ぜて楽しんでいます。あと、カミキリムシの幼虫の味はマグロのトロですし、セミの風味はナッツです。
 一番はまっているのは京都産コオロギです。京野菜で育てられたコオロギで、味はエビやカニなどの甲殻類に近く、本当においしいです。かめばかむほど、うま味が出てくる。卵かけごはんとコオロギだけで、他に一切の味付けはしないのがおすすめの食べ方です。
 見た目に抵抗感がある人は多いでしょうが、食べるとめちゃくちゃおいしいです。昆虫を食べないのは、食わず嫌いでもったいないと思います。
 政治も似ているところがあります。
 政治をつまらないと感じる人は多いかもしれませんが、人柄や駆け引きなどを知れば知るほど、本当に面白い。そういう意味では、政治を知ることと昆虫を食べることって、実は共通しているような気がします。

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