自民党総裁選 政策の継承だけでは物足りぬ
感染症の流行で傷んだ社会や経済を立て直さねばならない。首相を目指す各候補は、日本の針路を明確に示し、内外の課題にどう対処するかを具体的に語るべきだ。菅官房長官が、安倍首相の後継を選ぶ自民党総裁選への立候補を表明した。8日告示、14日投開票となった総裁選は、岸田政調会長、石破茂元幹事長を含む三つどもえの構図がほぼ固まった。
3氏とも、要職を務めてきたベテランである。識見を生かし、活発に政策を論じてもらいたい。
菅氏は記者会見で「安倍首相の取り組みを継承し、前に進める」と述べ、経済政策アベノミクスを堅持する意向を強調した。
安倍内閣は、財政出動や大胆な金融緩和によって企業業績を回復させ、雇用環境を改善した。菅氏が経済優先で政権を担う姿勢を示したことは、評価できる。
一方で、成長戦略は、成果が上がっているとは言えない。持続可能な社会保障制度や、財政再建の議論も遅れ気味だ。こうした課題を放置することは許されない。安倍内閣の政策を継続すると言うだけでは、不十分である。
長期政権では、公文書の改ざんのほか、記録の廃棄や杜撰 な扱いが次々に発覚した。国民に不信感が広がったのは事実だ。
菅氏がいずれの案件も「決着済み」で済ませているのは疑問である。仮に新首相となっても、政権への信頼が揺らぎかねない。政策決定や文書管理のあり方を検証し、改善を図る責任があろう。
岸田氏は、新型コロナウイルス対策を柱とした政策を発表した。検査を拡充するとともに、臨機応変に経済対策を実施する方針を示した。石破氏は、東京への一極集中の解消や、防災省の創設など安全な国造りを軸に据えた。
岸田、石破両氏ともに、人工知能の研究支援や、デジタル基盤の整備を掲げている。アベノミクスの弱点を補い、経済再生を図る狙いは理解できよう。
自民党の7派閥のうち5派閥が菅氏の支持を表明した。総投票数の4分の3を占める国会議員票では、菅氏が優位に立っている。
見過ごせないのは、「勝ち馬」に乗ろうと、早くも各派閥が主導権争いをしていることだ。新政権でのポスト獲得を目指す動きのようだが、見苦しい。
無派閥の菅氏が「派閥の論理」で選ばれるようなことでは、本人にとっても不本意ではないか。公約や政治姿勢を見極め、新たなリーダーを決めることが大切だ。
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