2020年7月15日水曜日

社説 

コロナと女性 雇用の安定が活躍の前提だ 

2020/07/15 05:00
 新型コロナウイルス流行によって仕事が減り、生活面でしわ寄せを受けた女性は少なくない。女性の雇用を安定させ、人材活用を進めたい
 政府が女性の活躍に関する今年の重点方針をまとめた。コロナの感染拡大について、「家庭の責任が女性に集中する役割分担意識が顕在化した」と強調した。

 学校休校や外出自粛に伴い、家事や子育て、介護の負担が増えた。重点方針の現状認識にうなずく女性は多いのではないか。

 生活不安やストレスにより、家庭内暴力(DV)の増加が懸念されている。母子家庭は経済的に深刻な影響を受けた。

 具体的な支援策として、重点方針がDV相談体制の充実や、男性の育児休業取得の推進などを掲げたのは適切だ。利用しやすい仕組みの構築が欠かせない。

 心配なのは、女性の雇用環境が厳しさを増していることだ。5月の労働力調査によると、非正規労働者は前年同月比で61万人減り、その7割を女性が占めた。

 女性のパートやアルバイトが多い飲食業や宿泊業などが、コロナ禍で大きな打撃を受けたためだとみられる。勤め先による雇い止めに加え、育児や介護など家庭の事情で、離職せざるを得なかった人も多かったのだろう。

 非正規は、景気後退期に雇用の調整弁になりがちだ。安倍内閣は女性の就業拡大を進めてきたが、正規の割合は低く、生活の安定につながっているとは言い難い。

 生産年齢人口は今後も減る見通しだ。経済成長を維持するには、女性が安定的に働ける環境を整えていかなければならない。

 政府は、非正規労働者の処遇改善にとどまらず、職業訓練を充実させ、正社員への転換を促していくべきだ。出産や介護でいったん離職した人が正社員として復職、再就職できるよう、企業に働きかけていくことも大切である。

 離職に至らないまでも、子供の預け先がなく、多くの母親が仕事を休まざるを得なくなった。保育サービスは重要な社会基盤であることが再認識された。保育士らの処遇改善や増員が急務だ。

 政府は、指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%に引き上げる目標を掲げてきた。国の調査によると、企業の管理職に占める女性の割合は14・8%で、国際的に見ても低水準だ。

 多様な人材を活用し、労働環境を改善することは、企業の生産性向上につながろう。政府の積極的な後押しが求められる。

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