2020年7月15日水曜日

あなたのお手元には年金定期便は届いていますでしょうか。
その額を見て将来に不安を感じた方もいらっしゃることでしょう。
ニュースでは、年金を増額させる方法として繰り下げ(年金受給開始を遅らせる)が取り上げられています。
確かに繰り下げで年金を増やせますが、その前におさえておきたい点もあります。
選択した後にやはり普通に受給した方が良かったと考えても時すでに遅しです。
繰り下げるべきか普通に受給すべきかの判断材料を検証していきましょう。
年金を「繰り下げ受給」すべきかどうかの判断材料© マネーの達人 提供 年金を「繰り下げ受給」すべきかどうかの判断材料

年金はいつから支給されるのか

年金は、原則として65歳に到達した日の属する月の翌月から支給されます。
たとえば、4月2日が65歳の誕生日の場合には5月から、4月1日が65歳の誕生日であれば4月から支給開始です(民法上、誕生日の前日に年を重ねるため)。
実際に支給されるのは、「偶数月の15日」(15日が休日の場合は直前の平日)で、前月までの2か月分が支給されます。
たとえば、5月に支給される年金は3月・4月分ということです。
万が一亡くなった場合には、必ず「未支給分の年金」が存在するということです。
死亡した日の属する月までは年金の支給対象であるため、たとえば、5月16日に亡くなった場合には、5月15日に支給された年金はあくまで3月・4月分であることから5月分は未支給の状態ということです。
未支給年金については改めて概要を解説させていただくとして、ここで押さえておきたい点は「日割り計算しない」ということです。

繰り下げ受給と増額率

ここからは、繰り下げ受給した場合の増額率を見ていきましょう。

増額率と繰り下げ可能年齢

・ 1か月繰り下げるごとに0.7%増額
・ 70歳まで繰り下げ可能(2022年4月~75歳まで可能)
・ 70歳まで繰り下げで42%(75歳まで繰り下げで84%)増加

繰り下げ受給の損益分岐点

ここで言う損益分岐点とは、65歳から受給するよりも繰り下げた方が受給額が多くなる分岐点のことです。
・ 70歳まで繰り下げた場合:おおむね81歳10か月
・ 75歳まで繰り下げた場合:おおむね87歳
ここまでは、報道などでも目にする機会は多いと考えます。
しかし、上記はあくまで「額面ベース」であり、所得税や社会保険料を控除した手取り額で計算した場合には居住地によっても異なりますが、増額率は若干上下します。
70歳まで繰り下げて約30%、75歳まで繰り下げて約60%程度に落ち着きます。
今後変動する可能性もありますが、損益分岐点は4~5歳程先に留まると考えます。
厚生年金の被保険者の上限は70歳までです。
保険料の徴収も同じく70歳までです。
しかし、年金カット(在職老齢年金)の対象は70歳以上でも働く場合には対象です。
繰り下げ以外の方法で増額を検討するのであれば、長く働くという選択肢もあることでしょう。
損益分岐点© マネーの達人 提供 損益分岐点

平均余命

65歳の男性の平均余命が約19年、計算上は約84歳なので、損益分岐点まで達しない可能性も否定できません。
また、65歳の女性の平均余命が約89歳であるため、損益分岐点を超える可能性が高いと言えます。
理論上は、
繰り下げは、女性の方が損をしない可能性が高いとも言えます。

「老齢厚生年金」「老齢基礎年金」同時にも別々にも繰り下げ可能

老齢厚生年金と老齢基礎年金は同時にまたは別々に繰り下げることが可能です。
たとえば、原則として65歳未満の配偶者を有している場合には、加給年金(扶養手当のようなイメージ)が加算されます。
国民年金(老齢基礎年金)のみを繰り下げて、厚生年金(老齢厚生年金)は加給年金が加算されることを考慮して、通常通り65歳から受給するという選択肢も考えられます。
加給年金を受給する際には年下の配偶者が以下の2点の要件を満たしていることが必要です。

加給年金の受給要件

・ 年収:850万円未満(所得にして655万5,000円未満)
その時点で超えていてもおおむね5年以内に退職などで減額が証明できれば可能です。
・ 厚生年金加入期間:20年未満
たとえば、夫が65歳になり、妻が60歳で妻の年金受給開始が64歳であれば、妻が64歳になるまでは受給が可能です。
もらい忘れとは反対に、受給停止事由が生じた場合には受給停止の届出をして返還しなければなりません。
該当した場合には注意が必要です。
「老齢厚生年金」を繰り下げてしまうと「加給年金」は受給できない
という点は押さえておきましょう。
当然のことながら、
受給額が増えれば、所得税や社会保険料も増えるために増額率は下がる
ということも押さえておきましょう。

「遺族厚生年金」を受給する場合

遺族厚生年金をもらう場合
© マネーの達人 提供 遺族厚生年金をもらう場合
妻が「老齢厚生年金」受給中に、夫が亡くなり「遺族厚生年金」を受けるようになったケースをお考えください。
「遺族厚生年金」は亡くなった夫の老齢厚生年金の3/4です。
そして、「遺族厚生年金」と「老齢厚生年金」の両方を受給できる場合には、まずは自身の「老齢厚生年金」を優先的に受給しなければなりません。
そこで、「遺族厚生年金」の方が多い場合もあることでしょう。
せっかく「老齢厚生年金」を繰り下げて増やしたとしても「遺族厚生年金」との合計額では変動なしということです。

繰り下げ待機中に死亡した場合

65歳から死亡時期までの期間を計算し、「65歳から通常受けられる額」として計算した「未支給の年金」がご遺族に支給されます。
たとえば、年額100万円であった場合には、100万円 × 4年間 = 400万円という考え方で、増額対象ではないという理解です。
65歳以降も働く場合には、年金の支給停止の制度があります。

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