2020年9月18日金曜日

 

私が「今すぐドルを買え」と勧める理由。コロナショック下での「自分のお金の守り方」(画像=THE21オンライン)© コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方 私が「今すぐドルを買え」と勧める理由。コロナショック下での「自分のお金の守り方」(画像=THE21オンライン)

コロナショックによる経済への影響が読めない中、やはり心配になるのは「自分のお金をどう守るか」だろう。「今こそ投資」とばかりに、証券口座を開く人が増えているという話も聞く。

経済評論家の藤巻健史氏は、「巨大な危機が確実に進行している」と主張し、「今は『守り』の資産運用に徹するべき」とアドバイスする。そのことを説いた著書『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』(PHPビジネス新書)を発刊した藤巻氏に、「自分の資産を守るため、今すぐすべきこと」についてうかがった。

*本稿は、『コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方』(PHPビジネス新書)の内容を抜粋・編集したものです。

■今は「守る」時期。すべての資産を円で持つのは無謀

投資の基本は「安い時に買って高い時に売る」。ただ、それができれば苦労はないわけで、プロですらそう簡単にはいきません。

ただし、これはあくまで「短期の値動き」の話です。どんなプロも短期の動きを正確に読み解くことは不可能です。ただし、「大きなトレンド」ならば、ある程度読むことができます。

その大きなトレンドを考えるならば、今は「守りのスタンス」に徹する時期だと思います。

今の日本はあまりにも巨額な財政赤字を抱えているうえ、「異次元の量的緩和」を繰り返したことで、「いつ水があふれてもおかしくないコップ」のような状態です。そこにコロナショックが襲いかかり、さらにリスクが高まっているのが現状。水があふれるとはつまり、ハイパーインフレが起きて円の価値が暴落し、資産の価値も暴落するということです。

コロナショック後の経済の先行きがあまりにも不透明な今、リスクを取るべきではないのです。こんな時に、お金を儲けようとするのは、ギャンブルというより、ただの無謀です。

インフレ時のセオリーは、他国に自分のお金を逃がすことです。第一次世界大戦後のドイツでハイパーインフレが起きた時も、助かったのは周辺諸国に財産を逃がしていた人たちだと聞きます。

有事の際に、自分の資産を守るために買う通貨のことを「避難通貨」といいます。手持ちの円を一部だけでも避難通貨に替えておけば、ハイパーインフレで円が紙くずになった時の保険になります。

そもそも、資産をすべて円で持っているということは、自分にはその意識がなくても、「円に100%賭けている」のと同義なのです。リスクヘッジの基本は分散投資です。ハイパーインフレが起ころうと起こるまいと、資産の一部を別の通貨に変えておくことは必須と言えるでしょう。

避難通貨の条件は、何よりも信頼性です。そうなるとやはり、先進国の通貨および金融商品ということになるでしょう。

中進国や新興国などは、経済的には伸びていても金融市場が発達していないので、金融商品の流動性リスクがあります。流動性リスクとは「売りたい時に適切な値段で売れない」というリスクのこと。私は30年近くマーケットの世界で生きてきましたが、売りたい時に売れないマーケットほど、怖いものはありません。

例えば、不穏な動きを察知して、1000万円の金融商品を売りに出したとします。しかし、誰も買い手がつかず、実際に売り注文が実行された時には200万円に下がっていた、などということもあり得るのです。刻々と損が膨らんでいくのをなすすべもなく見守るのは、まさに地獄です。

コロナショック後は、中国経済のさらなる拡大を予測する人もいますが、中国もまた、流動性リスクの高い国です。2015年7月、中国の上海株式市場で、多数の株が売買停止になったのは記憶に新しいところ。中国だけでなく、ブラジルやロシア、インドといったBRICs諸国も注意が必要だと私は思っています。

■余裕資金がない人も、今すぐドルを買うべき

そう考えると、お金を逃がす先の候補は絞られてきます。具体的には米ドル、イギリスポンド、スイスフラン、豪ドル、カナダドルといったところでしょうか。ここでは詳しくは触れませんが、ユーロはある「構造的欠陥」を抱えているため、あまりお勧めできません。

どれを買ってもいいのですが、中心に据えるべきはやはり、米ドルでしょう。

日本円の金融資産をどのくらい持っているかにもよりますが、当面の生活には使わないであろう余裕資金は、ドルおよびドル資産に替えておくことをお勧めします。ちなみに私は資産のかなりの部分をドルに移しており、日々の生活に使う円が足りなくなって困るほどです。さすがにこれはやり過ぎにしても、ある程度まとまった金額をドルに移してしまってもいいのではないかと思います。

「自分にはそもそもドル資産に替えてまで守るべき資産なんてない」「住宅ローンの返済や教育費などで家計は火の車」という人もいるかもしれません。しかし、そういう人たちこそ、今から準備を始めるべきです。今、貯金がまったくないというなら、毎月の積立でドル資産への投資を始めていくという方法もあります。

■「最強」のアメリカに死角はないのか?

ではなぜ、米ドルなのか。アメリカに留学し、アメリカのモルガン銀行に長年勤めていたため、「フジマキはアメリカがよほど好きなのだろう」と思われるかもしれませんが、まったくの誤解です。私はむしろアメリカ出張が大嫌いで、なんだかんだと理由をつけてほとんど行かなかったくらいです。

そんな私が「ドルを買え」と言い続けているのは、「アメリカが好きか嫌いかは別にして、その勢いが衰える材料は見当たらない」というのがその答えになります。

アメリカは政治・経済・軍事すべてにおいて世界最強です。かつてほどの国際政治力はないとしても、経済では依然としてGDP世界第1位。ここ15年のGDPの推移を見ると、リーマンショックの影響で2009年のみ後退したものの、それ以外は軒並み成長し続けています。GDPが巨大になれば成長率は下がっていくものですが、あのドデカい図体でもかなりの成長を続けているのには感心します。

2017年にトランプ政権が誕生してからは株価も絶好調で、2020年2月12日には、2万9551ドルまで上昇しました。コロナショックによって一時は2万円台を切るまで大暴落しましたが、その後立て直し、2020年6月12日時点で、2万5605ドルまで回復しています。

■アメリカ経済の強さは「多様性」と「金融のプロ」の存在にあり

新型コロナウイルスでは世界最大の感染者を出し、経済的にも大打撃を受けたにもかかわらず、なぜ株価が下がらないのか。

これは、政府の財政出動の効果が一番大きいとは思いますが、レンタカー大手のハーツやアパレルのJクルーなどコロナ倒産に追い込まれた企業がある一方、コロナショックがむしろ追い風となったIT企業や医療メーカーが好調を維持していることも大きいでしょう。このように、多様な産業を持つこともアメリカの強みです。

今でこそ原油価格が低迷していますが、石油は世界経済の最重要資源の一つであることには違いありません。アメリカはシェール革命のおかげで世界最大の石油生産国になりました。またGAFAと呼ばれる情報産業の会社はすべて米国籍です。要は石油と情報という、これからの世界の二大資源を押さえているのがアメリカなのです。

また、自国の経済を切り盛りするアメリカの財務長官が、常に金融のエキスパートであることも、信頼に足ります。現職のスティーブン・ムニューシンは、ゴールドマン・サックスの幹部として活躍した人物です。その前任のジェイコブ・ルーはシティグループの投資選択部門でCOO(最高執行責任者)を務めていました。歴代財務長官には他にもゴールドマン・サックス出身のヘンリー・ポールソンやロバート・ルービン、ハーバード大学で史上最年少の教授になった経済学者であるローレンス・サマーズなど、錚々たる面々が並んでいます。日本の歴代の財務大臣が、経済・金融のプロでないのに比べると、雲泥の差です。

以上のことを考えると、コロナの感染拡大が終息すれば、世界で最初に経済が回復するのはアメリカだと考えざるを得ないのです。好き嫌いは別にして、一番安全性の高い通貨に避難すべきということです。

コロナショック&Xデーを生き抜くお金の守り方

藤巻健史(経済評論家) 発売日: 2020年07月17日

コロナショックの影響はいつまで続くのか……。正直、先は読めないが、著者によれば「どう転んでも日本の危機は逃れられない」という。では、不可避の危機に対して、我々個人はどうすればいいのか。本書では、通貨、株、国債、金、不動産などについて、「今買うべきもの」と「買ってはいけないもの」を一つひとつ分析。国内外を知り尽くす金融のプロであり、政治家として日本の問題点にも鋭く切り込んで来た著者だからこそ書ける一冊。コロナショックを受け緊急発刊!

藤巻健史(経済評論家)

0 件のコメント:

コメントを投稿