9月7日 編集手帳
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芝居小屋の舞台から一番遠い席は「大向 う」と呼ばれる。全体を見渡せるため、目も耳も肥えた芝居好きが集まる◆講談の「中村仲蔵」は、江戸時代に実在した役者の立志伝である。仲蔵は日の当たらない道を歩んでいたが、忠臣蔵の端役を演じるのに苦心して、全身白塗り、びしょぬれという度肝を抜く姿で舞台に現れた。静まりかえった小屋で、見つめていた常連客が喝采をあげた――◆国の指導者を決める選挙で、投票権を持たない国民はさしずめ大向うの客だろう。舞台にあがる3氏には日本の進路を濃く深く論じてもらいたい。あす自民党総裁選が告示される◆コロナ禍の対処と経済の両立はもちろん、対立を深める米中両国とどう付き合うか。折からの重い課題である拉致問題、少子高齢化、地方の疲弊…。現政権の看板「アベノミクス」が継承に値するか否かも、聞いてみたいところである◆すでに結果が見えるからといって政策論議をおろそかにすれば、党の汚点となろう。総裁選を単なる派閥の主導権争いにしてはなるまい。離れた場所から、目も耳も肥えた国民が注視していることをお忘れなく。
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