2020年7月27日月曜日

国勢調査 戸別訪問の負担軽減が必要だ


 国勢調査は日本の人口と世帯構成の実態を明らかにし、国の施策から民間部門まで幅広く活用されている。その意義を国民に周知し、精度の高い調査を維持することが重要だ。
 5年に1度の国勢調査が、今秋に行われる。外国人を含め、日本に住んでいる全ての人の性別や就業状態、通学地などを世帯ごとに回答してもらう。今年は、1920年の第1回調査から100年の節目でもある。
 調査に基づく人口は「法定人口」として、衆院小選挙区の区割りの見直しに使われる。民主主義の根幹に関わる統計と言える。
 地方交付税の算定や政府・自治体が社会保障政策、防災計画を策定する時の基礎データとなる。民間企業が製品・サービスの需要を予測したり、店舗や工場の立地を計画したりする際にも有用だ。
 国勢調査は、その重要性にもかかわらず、現在難題に直面している。肝心の調査員が不足し、精度の低下が懸念されている。
 高齢化による担い手不足に、新型コロナウイルスが追い打ちをかけた。感染不安による辞退や敬遠が相次ぎ、目標の70万人に届かない可能性がある。
 これまでは、調査票を手渡しで配布し、不在時や回答を得られない時は再訪問することが原則となっていた。総務省は、対面調査が難しくなっている現状を踏まえ、「非接触型」に重点を置いた調査に切り替える方針だ。
 地域の実情に応じ、インターホン越しの説明や不在時のポストへの調査票投函とうかんを認める。配布・回収期間も延長するという。
 インターネットによる回答率は前回約37%だったが、今回は50%とする目標を掲げている。ネットや郵送での回答を増やすことで、調査員の負担を減らし、コロナ禍の影響を最小限に抑えたい。
 都市部や若者の間での回答率の低さも問題となっている。
 前回の調査では、期間内に回答が得られず、調査員が近所の人などから聞き取り調査をした世帯の割合が初めて1割を超えた。東京都では3割に上っている。
 国勢調査の意義に関する認識が薄いのに加え、最近は見知らぬ人の訪問に拒絶反応を示す人は少なくない。プライバシー意識の高まりや悪質な訪問販売、犯罪への警戒心が背景にあるのだろう。
 総務省は、大学や企業に協力を求め、若者や単身者への働きかけを強めている。将来にわたって国勢調査を継続するための基盤を築いてもらいたい。

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