完全ETC化 不利益にも配慮した推進策を
国土交通省が、高速道路のすべての料金所をETC(自動料金収受システム)専用にする検討を始めた。有識者会議で、実施時期や手順、対応策などについて話し合うという。
高速道路は、公共インフラである。不利益を受ける人が出ないよう、丁寧に目配りしながら普及を後押ししてほしい。
ETCは、車載器と料金所のアンテナが無線通信し、高速道路会社からクレジットカード会社に情報を送って課金する仕組みだ。
2001年から本格運用が始まった。料金所で停車して現金を受け渡す手間がなくなり、渋滞の緩和に貢献してきた。時間帯別の柔軟な割引なども可能にした。
利用率は93%に達したが、まだ未搭載車が残っている。高速道路の運営を効率化するには、100%に近づけることが望ましい。
ETC化で現金ブースをなくせれば、高速道路会社は人件費の削減などによる合理化ができる。通行料金の引き下げで、利用者に恩恵が届くようにすべきだ。
政府が進めているキャッシュレス化の流れに沿う。ビッグデータを収集し、活用できる意義は大きい。渋滞対策や事故防止策のほか、新ビジネスの創出につながることが期待される。
新型コロナウイルスの流行で料金所の従業員に感染者が出て、一時、閉鎖を余儀なくされたケースがあったという。現金払いをなくし、人との接触を減らして感染リスクを下げる狙いもある。
重要なのは、なお利用をためらう人への対応である。
導入しない理由を、しっかり分析することが大切だ。
クレジットカードを持っていない人は、口座から料金を引き落とすETC専用のカードを作れば使えるが、保証金や年会費がかかってしまう。車載器の導入費用も普及を妨げる一因だろう。
国などによる助成を考えてもいいのではないか。新車への搭載義務化も選択肢となる。
高速道路をあまり利用しない人は、ETCの必要性を感じないはずだ。ドライブスルーの店や駐車場など、他の料金決済に使えるようにすることが求められる。
それでも、未搭載車が残る可能性は高い。国交省は、そうした車が料金所に入った場合、ナンバーを読み取って所有者を調べ、事後的に請求する手法を検討する。
ただ、軽自動車と二輪車は、高速道路会社が直接、所有者情報を得ることができない。円滑な徴収法について知恵を絞りたい。
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