7月27日 編集手帳
1964年11月から7年以上にわたり首相を務めた佐藤栄作氏は、引退の記者会見で「新聞記者は出ていけ」と述べたことで知られる◆秘書官だった楠田実氏の日記によると、直前に佐藤氏は「テレビを通じて国民に挨拶をしよう。最後に俺のわがままを通させてくれ」と懇願したという。海外の大統領のように、直接語りかける形を望んだらしい◆だが、調整で行き違いがあり、記者会見場を見回した佐藤氏から、冒頭の発言が飛び出した。経済問題などで各紙の厳しい批判を受けていた影響もあったのだろう。怒った記者側は退席してしまった◆安倍首相の直近の記者会見は6月18日に遡る。新型コロナウイルスの流行で休みは少なく、豪雨対策にも追われているという事情はあろうが、折に触れて記者会見を開くことは大切ではないか。感染は再拡大している。密集などが避けられない業種の先行きは厳しい。感染抑止と経済活動をどう両立させていくか。丁寧に説明し、不安の払拭 に努めてもらいたい◆安倍氏の大叔父である佐藤氏は、政権末期、求心力を失ったとされる。長期政権の轍 を踏んではなるまい。
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