2020年7月31日金曜日

コロナと虐待 子供の見守り機能を高めたい

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、子供が虐待を受けるリスクが高まっている。兆候を早期に察知できる態勢を整えることが重要だ。
 「泣きわめく子供をたたいてしまった」「誰にも会えないことが苦しい。赤ちゃんを虐待してしまうのではないかと不安だ」
 民間団体などがインターネット上で24時間対応している相談サイトや電話窓口には、コロナ禍で追い詰められた親から、こうした訴えが多数、寄せられている。
 緊急事態宣言が発令された4~5月、全国の児童相談所が対応した虐待の件数は2万7000件だった。昨年同期より2%減っており、虐待件数が毎年増え続けているのとは対照的だと言える。
 学校の休校や外出自粛に伴い、自宅で過ごす時間が増え、周囲が子供の異変に気づく機会が少なくなった影響だろう。虐待は潜在化したと見るべきではないか。
 感染リスクを避けるため、自治体が行う乳幼児健診も各地で延期された。子供の予防接種を先延ばしにする親も目立っている。
 東京都内で6月、3歳女児が自宅に放置され死亡した事件では、逮捕された母親が昨年の3歳児健診を受けさせていなかった。
 乳幼児健診や予防接種は、医師や保健師が子供の発育や親子関係を確認し、虐待を早期に発見できる大事な機会だ。人が密集する集団健診を個別健診に切り替えるなどして着実に実施してほしい。
 気がかりなのは、感染への恐れを理由に、虐待の懸念がある子供の親が、児相職員の家庭訪問を断るケースがあることだ。
 電話をかけて子供に代わってもらったり、タブレット端末を渡して画面上で様子を確かめたりするなど、様々な方法で子供の状態を確認したい。必要ならちゅうちょせず一時保護するなど、命を守ることを最優先に対応すべきだ。
 子供への接し方が分からない親をどう支えるか。保健師らが出産前から家族と切れ目なく関わり、助言することが大切だ。
 活動を再開した地域の子ども食堂など、民間団体との連携も有効だろう。非常時だからこそ、子供に関わる機関が協力して見守りを強化してもらいたい。
 虐待の背景に、家庭内暴力(DV)があることも少なくない。
 自粛生活のストレスや経済的困窮への不安から、配偶者や子供に暴力をふるう事例が報告されている。DVの被害者支援機関と児相の情報共有を進め、隠れた虐待を見逃さないようにしたい。

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