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編集手帳・よみうり寸評

            ８月２７日　編集手帳

2020/08/27 05:00

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　新幹線から降りるとき、車掌さんが客の一人ひとりに頭を下げて見送る光景が見られる。車掌室を併設する車両を使うと、この恩恵にあずかれると鉄道雑誌で読んだのを思い出した◆きのう東北新幹線で東京駅に着いた「やまびこ１３６号」の車掌さんも、見送りのあいさつをしたかもしれない。お客は宮城県石巻市から来たマダイさま、カキさま――漁港で朝に水揚げされたばかりの海産物１４０キロが運ばれた◆空席に貨物を積んで輸送できるかどうかを試す実験だという。海産物は構内のすし店や居酒屋に配られ、鮮度の高い海の幸に舌鼓を打った通勤客がおられることだろう◆一見たのしそうだが、感染拡大が生んだ景色かと思うと複雑な心持ちになる。東北新幹線は乗客数が前年の約３割にまで落ち込んでいる。タイさま、カキさまを見送った車掌さんの胸中はどうなのだろう◆あらゆる産業で、事業をつなげ、雇用をなくすなと、あの手この手を尽くす努力がコロナ禍の経済下で続いている。思えば、電機メーカーがマスクの製造を始めたのは春先だったか。のんきに旅にも出られなくなって、そろそろ半年になる。