2020年8月10日月曜日

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「区域分け」不十分で看護師から拡大か…院内感染調査、マスク着用しなかった患者も

院内感染の報告書を公表した神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区で)
院内感染の報告書を公表した神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区で)

 神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市中央区)は、同病院で4~5月に発生した新型コロナウイルスの院内感染に関する調査報告書を公表した。危険区域と安全区域に分ける「ゾーニング」が不十分で、コロナ患者を担当した看護師から院内感染が広がった可能性に言及したほか、入院患者にマスクを着用させていなかったことも原因の一つとした。(大背戸将) 同病院では4月9日、透析などで入院していた70歳代女性の感染が判明。最終的に医師や看護師ら病院職員29人、入院患者7人の計36人が感染し、濃厚接触者ら職員延べ約350人が自宅待機となり、約2か月間、救急外来の受け入れを原則停止するなどの対応を余儀なくされた。

 報告書によると、70歳代女性がいた病棟では、一般患者とコロナ患者の双方が入院していた。コロナ患者は個室で隔離されていたが、コロナ患者担当の看護師と非感染者担当の看護師が接触する機会があった。

 この病棟の勤務者のうち、3月31日にコロナ患者の対応にあたった看護師は、4月5日に発熱の症状があったが、翌日には無症状になったため、同7日から勤務を再開したものの、その後に陽性が判明した。この看護師が同僚や他の患者に感染を広げたと推定される、と指摘している。

 一方、当時、市場で不足していた医療用の高性能マスク「N95」を巡り、医療関係者はせきの症状が強いコロナ患者の対応時には装着したが、それ以外はサージカルマスクを着用していた。この点については「一律にN95を装着することが、感染管理上はより安全だった」と総括している。

 また、院内感染が判明するまで、コロナ患者がマスクをつけていなかったことを問題視。医療関係者は防護服などで感染対策をとっていたが、至近距離で患者と接するケースもあり、「感染拡大の原因として考えられる」としている。

 同病院では現在、コロナ患者を受け入れる病棟は、非感染者と分けており、10月には重症者専用の臨時病棟も敷地内に開設予定だ。

 入院患者すべてにマスク着用を求めており、発熱やせきのコロナ症状を訴える職員がいれば自宅待機として、速やかにPCR検査を実施しているという。

 同病院は今回、入院患者3人が死亡していたことを初めて公表。木原康樹院長は記者会見で「当時のコロナに関する知識に基づいて対応したが、院内感染を防ぎきれなかった。得た教訓を、他の医療機関でも生かしてほしい」と話した。

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