2020年9月1日火曜日

  • <速報> 自民・石破元幹事長、総裁選立候補を表明

9月1日 編集手帳

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 大正・昭和のユーモア作家、生方敏郎は“生方貧乏”と呼ばれた時期があった。音読みだと名はビンロウで、これをもじったものか。子沢山こだくさんでもあり、1923年8月30日、第6子が生まれた◆その2日後が関東大震災である。『明治大正見聞史』を読むと、産後の妻と子らを抱え、郊外へ避難しかねた生方は隣人や文壇の知己に助けられている。古き東京のよさだろう。以前書生だった青年も奔走してくれた◆ところが「朝鮮人暴動」の流言が広がる。警察と戦争になるとエスカレートしていく。あわてた青年はセミ捕りの竿さおを持ち出し、「竹槍たけやりをこしらえてもいいですか」。生方は一喝した。「それは兵隊と巡査の仕事だ」◆昨今、残念なのは「自粛警察」なる語を聞くことだ。コロナの不安が過剰な正義感に転じるのか、度を越した糾弾に及ぶ。ネットの物陰から言葉の竹槍を突き出す手合いも後を絶たない◆群れ咲く花の川柳を古書で見かけた。〈割込わりこみに咲く朝顔はいびつなり〉(『川柳漫画全集』5巻)。危急の時も群集心理に陥らず、支えあえるか。今日は震災忌にして防災の日。心の備えも確かめた

9月1日 よみうり寸評

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 生まれ育った沖縄を、〈暴風の名産地〉と形容したのは詩人の山之口貘である。その猛威はすさまじく、ときに〈三日も四日も家屋に閉じこめられていなければならない〉という◆むろん備えは怠らない。台風が迫ると雨戸に棒を渡して麻縄で縛りつけた。〈沖縄の家屋は…身構えをして、五十メートル、六十メートルの暴風雨に挑みかかるのだ〉と述懐している(『山之口貘詩文集』)◆やはり「二百十日」は台風襲来の時節らしい。立春から数えて210日目の昨日来、沖縄は暴風雨に見舞われた。九州へと進む大型の台風9号ゆえである◆今朝の段階で最大瞬間風速が50メートルを超えた所がある。屋根や外壁が吹き飛んだとの情報も相次ぐ。街路樹が激しく揺さぶられる映像に息をのみつつ、島で暮らす人々の無事を祈るばかりである◆あたかもきょう防災の日を迎えている。台風の進路ならずとも、自然災害への身構えを一人ひとりが確かめたい。豪雨、地震…まだ炎熱も去らない。日々、災厄を心すべき時代に入っている。

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