(大柳聡庸、高橋寛次、田辺裕晶)
「アベノミクスを責任をもって引き継いで、さらに前に進めていきたい」。菅氏は2日の総裁選の出馬会見でこう話した。官房長官として支えてきた政権の実績については、「政権交代前は為替(の円相場は1ドル=)75円、(日経平均)株価は8000円だった。経済政策を最優先にしてきたことで、為替は105円、株価は2万3000円になった。雇用も増えた」と自賛した。
岸田氏も「持続していかなければならない部分もある」とした上で、「大企業、富裕層は実感できるのかもしれないが、(恩恵が中小企業や低所得者まで行き渡る)『トリクルダウン』は実感できない」と述べ、格差解消に取り組むと強調した。
もっとも、大規模緩和については、3氏とも継続する考えで一致。変更した場合、株安や円高が進む可能性があるからだ。石破氏は「(金融政策を)急に変えることはない」と明言。岸田氏も金融機関の収益が悪化しているといった副作用に触れながらも、「市場に織り込み済みで、これを変えると別の弊害になる」と述べた。
税・財政政策でも3氏の主張の違いが垣間見えた。
アベノミクスを踏襲する考えを示した菅氏だが、官房長官として薬価を毎年改定することで高齢化に伴う医療費膨張の抑制を狙うなど歳出改革にも取り組んでおり、新型コロナウイルス収束後を見据え、財政再建にも目配りをするとみられる。
財政規律を重視するのは岸田氏も同様だ。現時点で思い切った財政出動の必要性があることを認めながら、「数年先には各国とも財政も金利も平時に戻そうと努力するだろう。その時は日本も遅れずに財政健全化を考える」と指摘した。
一方、石破氏は新型コロナ対策の一環として消費税減税の検討を打ち出した。社会保障財源としての必要性は指摘しつつ、富裕層に比べ所得に対する消費の割合が高い低所得者ほど負担が大きい消費税の「逆進性」に触れ、「果たすべき役割をもう一度検討する」と表明した。
通商政策に関しては、路線の踏襲も一筋縄にはいかない。安倍首相がトランプ米大統領などとの間に築いた個人的な関係は、全てを引き継ぐことはできないからだ。次期首相は、各国首脳の信頼を得ていく地道な取り組みが必要となる。
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