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民主、共和両党の党大会を見て、共和党のほぼ完璧な勝利だと感じた。しかしながら、こんなに早くその効果が出るとは想像していなかった。各種世論調査を分析して平均値を割り出しているReal Clear Politicsによると、共和党大会が終わった直後の各種調査をまとめると、アメリカ全土では引き続きバイデン氏が6.9ポイントほどリードしているものの、肝心要の激戦区では、完全にトランプ氏に流れに乗った。ジョージア州:45.6対46.7(バイデン対トランプ 以下同)
オハイオ州:47.0対44.7
ミネソタ州:49.3対44.0
アイオワ州:45.0対46.7
ネバダ州:48.3対44.3
テキサス州43.3対46.8
いずれの州もほぼ統計誤差の範囲内であり、両候補は横一線に並んだと見るべきだ。一時は激戦区の平均で2桁の差をつけていたバイデン氏は、尻に火がつて慌てているはずだ。今週末の同調査では、トランプ氏が逆転し、優勢になっているだろう。大統領選挙では、追い上げる側が有利である。トランプ氏は波に乗った感がある。日本でも同じだと思うが、選挙戦で見ておくべきは、支持率そのものより「勢い」である。
なにしろ共和党大会は、全面的に作戦勝ちだった。まず、今後も大論争が予想されるコロナウイルス問題については、本来ならトランプ氏と共和党の重荷になる不利な話題であるはずなのに、トランプ氏に言わせると「アメリカで多数の犠牲者が出ているのは中国のせい」なのだ。しかも、その原因を作ったのはオバマ政権が対中外交を間違ったからであり、その政権で副大統領を務めたバイデン氏に重い責任があるという。大胆不敵な主張である。このふてぶてしさがトランプ氏の真骨頂であり、アメリカの保守派たちは、こういうなんでも外国のせいにする論理が大好きなのだ。
次にトランプ氏が攻撃したのは、これまた自分たちに不利になりかねない「黒人の命は大切(BLM)」運動だった。全米で繰り返されているデモでは、一部で暴力事件や破壊活動、略奪などか起きている。これが「民主党の無政府主義者たち」の暴動だと非難したのである。民主党は社会主義政党であり、極端で暴力的な左翼がはびこっていて、そうした人たちと結びついたのがバイデン氏だという論法だ。
そこまで言われたら、バイデン氏は即刻記者会見して反論しなければならないはずだが、いまだに効果的な反撃はできていない。バイデン陣営の足かせになっているのが「バーニー・サンダースの亡霊」である。サンダース氏は民主党予備選でバイデン氏を最も苦しめたライバルだったが、自ら「自分は社会主義者である」と名乗り、その主張を多くの若い党員が支持した。バイデン氏はそうした勢力と妥協することで党をまとめようとしているから、少なくとも「社会主義者に担がれたバイデン」というトランプ氏の主張は当たらずとも遠からず、といったところなのだ。もちろん、それと暴動は直接関係ないが、共和党支持者はその主張に飛びついて結束した。
この戦略はこれからも効果を発揮すると思われる。トランプ陣営は、「民主党は社会主義政党だ」「左翼の若者は法と秩序を守らない」「無政府主義者までいる」と繰り返し声を張り上げるだろう。現実に一部で暴力事件が起き続ける限り、その主張は説得力を持つ。トランプ氏の居直りに民主党支持の若者たちがいきり立てば立つほど、トランプ氏に有利だ。
トランプ氏と共和党の戦略は見事である。よほどの戦略家がついているはずだ。筆者はある男を疑っているが、今のところ尻尾を出さない。わかりしだいお伝えしたい。
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