2020年9月2日水曜日

自民党総裁選への立候補を表明し、記者会見で笑顔を見せる菅義偉官房長官=衆院第2議員会館で2020年9月2日午後5時42分、竹内幹撮影© 毎日新聞 提供 自民党総裁選への立候補を表明し、記者会見で笑顔を見せる菅義偉官房長官=衆院第2議員会館で2020年9月2日午後5時42分、竹内幹撮影  2日に安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選への立候補を正式に表明した菅義偉官房長官(71)。記者会見では、秋田県の農家生まれで地方議員出身の「たたき上げ」を強調する一方、安倍政権を継承する姿勢を示し、政策面での「菅カラー」は薄かった。森友・加計学園問題など安倍政権の「負の遺産」に関しても、従来の政府見解を繰り返すだけだった。

自らの「原点」語る狙いは
 「雪深い秋田の農家に生まれ、高校卒業後、すぐに農家を継ぐことに抵抗を感じ、就職のために東京に出てきた」。菅氏は記者会見の冒頭、自らの「原点」として、町工場から国会議員秘書、横浜市議と歩んだ経歴を披露。「地方分権を進めなければという思いの中で国政を目指した」と地方や国民生活を重視する姿勢を自らの言葉で強調した。対立候補の岸田文雄政調会長(63)、石破茂元幹事長(63)が共に「世襲議員」であることを念頭に、庶民感覚を訴え共感を呼びたい思惑もあるとみられる。
 冒頭発言の後半は、ダムの洪水調節機能強化▽携帯電話料金の引き下げ▽ふるさと納税▽訪日外国人客誘致▽農産品輸出促進――と安倍政権で自ら主導した政策を五つ列挙し、実績をアピールした。「国の基本は自助、共助、公助」とし、個人や地域で補えない部分は「政府が責任を持って対応する」と語った。だが、経済政策や外交に質問が及ぶと、従来の答弁に一転した。
記者からの質問に気色ばんで反論
 「アベノミクス」については「しっかりと責任をもって引き継いで、さらに前に進めたい。日銀との関係は、(安倍晋三)首相と同じように進めたい」と説明。首脳間の親密な関係を築いた日米、日露関係は「変わりない」とし、「(トランプ米大統領と首相の)電話協議に全て同席している」とアピール。北朝鮮による拉致問題解決も「金正恩朝鮮労働党委員長と条件を付けずに会い、活路を切り開きたい気持ちも同じだ」と、首相がこれまで繰り返した文言を踏襲した。
 「まるで安倍首相の発言を聞いているようだ。安倍政権の単なる延長なのか」と違いを記者から問われると、「役所の縦割りの弊害をぶち破って新しいものを作っていく」とやや気色ばんで反論した。ただし、安倍政権の官房長官として取り組んだことを、さらに進める意欲を示したに過ぎない。独自色について再び問われると「『菅色』を出せるかは、新型コロナウイルス対策に全力を尽くすと同時に、自らの考えを示しながら実現していきたい。必ずできる」と訴えた。
モリカケは従来回答 どうする安倍政権の「負の遺産」
 森友・加計学園の問題や首相主催の「桜を見る会」を巡る問題など、安倍政権の「負の遺産」についても、従来の政府見解を繰り返した。森友学園問題は「財務省関係の処分、検察の捜査も結論が出ている」、加計学園問題も「法令にのっとったプロセスで検討が進められてきた」と説明。桜を見る会も「さまざまな指摘があり、今年は中止して、これからのあり方を全面的に見直している」と述べるにとどめた。
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡っても、1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意に触れ、「沖縄の地元の市長、県知事も合意した中で決まった。辺野古に移設することで普天間飛行場の危険性除去が実現できる」と改めて説明した。会見は約45分で打ち切られ、連日の官房長官としての会見と似たような答弁も目立った。【畠山嵩、水脇友輔】

0 件のコメント:

コメントを投稿