「雪深い秋田の農家に生まれ、高校卒業後、すぐに農家を継ぐことに抵抗を感じ、就職のために東京に出てきた」。菅氏は記者会見の冒頭、自らの「原点」として、町工場から国会議員秘書、横浜市議と歩んだ経歴を披露。「地方分権を進めなければという思いの中で国政を目指した」と地方や国民生活を重視する姿勢を自らの言葉で強調した。対立候補の岸田文雄政調会長(63)、石破茂元幹事長(63)が共に「世襲議員」であることを念頭に、庶民感覚を訴え共感を呼びたい思惑もあるとみられる。
冒頭発言の後半は、ダムの洪水調節機能強化▽携帯電話料金の引き下げ▽ふるさと納税▽訪日外国人客誘致▽農産品輸出促進――と安倍政権で自ら主導した政策を五つ列挙し、実績をアピールした。「国の基本は自助、共助、公助」とし、個人や地域で補えない部分は「政府が責任を持って対応する」と語った。だが、経済政策や外交に質問が及ぶと、従来の答弁に一転した。
記者からの質問に気色ばんで反論
「アベノミクス」については「しっかりと責任をもって引き継いで、さらに前に進めたい。日銀との関係は、(安倍晋三)首相と同じように進めたい」と説明。首脳間の親密な関係を築いた日米、日露関係は「変わりない」とし、「(トランプ米大統領と首相の)電話協議に全て同席している」とアピール。北朝鮮による拉致問題解決も「金正恩朝鮮労働党委員長と条件を付けずに会い、活路を切り開きたい気持ちも同じだ」と、首相がこれまで繰り返した文言を踏襲した。
「まるで安倍首相の発言を聞いているようだ。安倍政権の単なる延長なのか」と違いを記者から問われると、「役所の縦割りの弊害をぶち破って新しいものを作っていく」とやや気色ばんで反論した。ただし、安倍政権の官房長官として取り組んだことを、さらに進める意欲を示したに過ぎない。独自色について再び問われると「『菅色』を出せるかは、新型コロナウイルス対策に全力を尽くすと同時に、自らの考えを示しながら実現していきたい。必ずできる」と訴えた。
モリカケは従来回答 どうする安倍政権の「負の遺産」
森友・加計学園の問題や首相主催の「桜を見る会」を巡る問題など、安倍政権の「負の遺産」についても、従来の政府見解を繰り返した。森友学園問題は「財務省関係の処分、検察の捜査も結論が出ている」、加計学園問題も「法令にのっとったプロセスで検討が進められてきた」と説明。桜を見る会も「さまざまな指摘があり、今年は中止して、これからのあり方を全面的に見直している」と述べるにとどめた。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡っても、1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意に触れ、「沖縄の地元の市長、県知事も合意した中で決まった。辺野古に移設することで普天間飛行場の危険性除去が実現できる」と改めて説明した。会見は約45分で打ち切られ、連日の官房長官としての会見と似たような答弁も目立った。【畠山嵩、水脇友輔】
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