一政党のトップを選出するにとどまらず、事実上、首相を決める選挙である。政策論争をなおざりにしてはならない。
安倍首相の後継を選ぶ自民党総裁選の方式が決まった。党大会に代わる両院議員総会を開き、国会議員394人と47都道府県連代表各3人の計535人による投票で争う。8日告示、14日投開票となる見通しだ。
新型コロナウイルスの感染状況や経済情勢は予断を許さない。政治空白を最小限にするため、後継選出を急ぐのは当然である。
党内では、若手議員らから全国一斉の党員投票を求める意見が出ていた。だが、名簿を精査し、郵便などで投票を実施するには2か月を要するという。執行部は、両院議員総会方式とした理由を丁寧に説明すべきだ。
この方式でも、地方票は全体の4分の1を占める。執行部は、都道府県連に独自の党員投票を行うよう促す方針だ。その判断材料とするためにも、可能な限り候補同士の討論を実施し、主張の違いを明らかにする必要がある。
選挙戦は、菅官房長官、岸田政調会長、石破茂元幹事長の3氏を軸に、構図が固まりつつある。
最大勢力の細田派を含め、5派閥が無派閥の菅氏を支持する方向だ。岸田、石破両氏は自らの派閥以外に支持が広がらず、国会議員票は菅氏が優位に立っている。
岸田氏は「国民の協力を引き出せるリーダーを目指したい」と立候補を表明した。石破氏は記者会見で「納得と共感が得られる自民党でありたい」と述べた。菅氏も近く出馬表明するとみられる。
菅氏は2012年末の第2次安倍内閣発足以来、官房長官を務め、官邸主導の政策決定の中心にあった。岸田氏は外相と政調会長を歴任し、石破氏も政権前半に幹事長、地方創生相を務めた。
この中で、菅氏は、政策の継続性を保ち、コロナ対策と経済活動の両立を目指すうえでも適任とみられているのだろう。
残念なのは、派閥の活発な動きとは対照的に、政策論争が一向に盛り上がらないことである。
各派が相次いで菅氏支持を決めた背景には、主流派の地位を確保したい思惑がうかがえる。派閥の合従連衡だけで総裁が決まるようでは、新政権が発足しても、国民の高い支持は得られまい。
安倍政権の何を継承し、どこを修正するのか。首相として目指すものは何か。各氏は、基本理念と具体的な政権構想を明確に示し、国民に問うてもらいたい。
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