2020年8月7日金曜日


  獄中の案里被告はバッチを失う瀬戸際に立たされている。公選法では選挙の当選者や連座制対象の秘書、親族らが問われた買収事件などの判決は「起訴から100日以内にするよう努めなければならない」と定められている。裁判に時間がかかり、判決や当選無効が確定した時には議員の任期が満了しているような事態を避けるためで、初公判も起訴から30日以内に開くことが求められる。

 案里参院議員の公設秘書で、車上運動員への違法報酬事件で公選法違反(買収)罪に問われた被告の公判は百日裁判で審理され、広島地裁は起訴からおよそ80日で執行猶予付き懲役刑を言い渡した(現在、控訴中)。公設秘書の有罪が確定し、連座制適用が認められれば、案里議員は自身の刑事裁判の結果にかかわらず失職する。

 同じく公選法で起訴された河井被告夫妻も百日裁判で争われることになる。8月中には、初公判を開く方向で、検察と河井被告夫妻の弁護士、裁判所で調整されているという。自民党幹部がこう話す。

「河井被告夫妻は、徹底して争う意向のようだ。2人ともカネは配ったが、買収ではなく当選祝いなどの政治資金であると、法廷で主張する見込みだ。河井被告夫妻がカネを渡したと検察が主張する100人のほとんどを法廷に呼び、証言を求めるそうだ。克行被告は、検察側の出してきた証拠を熱心に読み込み『これは違う』などと、裁判に備えていると聞いている。だが、猛暑の拘置所生活は厳しく、河井被告夫妻ともにかなり痩せ、暑さがこたえているようだ。保釈は当面、厳しい」

 一方、河井被告夫妻の買収事件の余波で広島では、選挙戦の真っ只中だ。

 克行被告からカネをもらったとされる三原市長だった天満祥典氏と安芸高田市長だった児玉浩氏がともに辞任。出直し市長選がはじまったのだ。

 選挙戦初日、三原市の自民党の市長候補の出陣式には、広島県の湯崎英彦知事や自民党広島県連の宮沢洋一参院議員、そして参院選で案里被告と争って落選した広島政界の重鎮、溝手顕正氏らが顔を見せた。

 宮沢氏は河井被告夫妻についてこう断罪した。

「自民党に県民の厳しい目が向けられている。河井夫妻、言語道断、本当にとんでもないことをしてくれたと思っている」

 自民党候補と対抗する別の候補者は「金権政治を断つ!」と大きなのぼりを掲げる。自民党の三原市議の一人はこう話す。

「溝手氏は三原市長から参院議員になった人物。まさに地元だ。それなのにお膝元の天満氏は河井被告夫妻から150万円ものカネをもらい買収されていた。自民党というだけで『河井被告夫妻からもらったんじゃないのか』と市民から疑惑の目でみられて困っている。そんな政治不信の影響からでしょうか、今回は過去最多の4人が市長選に出馬している。河井被告夫妻がばらまいたカネでどれだけ地元に迷惑がかかっているのか、2人はわかっているのか。広島から消し去りたいよ」

 そんな声もあって、自民党では克行被告の衆院広島3区と案里被告の参院広島選挙区に新しい候補者を擁することを検討中だという。夫妻の選挙区には出馬希望者がいるという。

「克行被告は、無罪を勝ち取り広島3区から出馬と意気軒昂のようだがすでに自民党を離党している。広島だけじゃなく、安倍政権をめちゃくちゃにした河井被告夫妻をそのままにはしておけない。この秋にも解散かと言われる中で、早く2人の後継を決めなきゃいけない。最近の世論調査で支持率が低迷している大きな理由の一つが河井被告夫妻。しっかりケジメをつけないといつまでも2人の悪評で、ますます支持が下落するばかりだ。河井被告夫妻が自民党として広島に戻る席はない」(前出・自民党幹部)

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