2020年8月7日金曜日


元徴用工問題 韓国は事態悪化を放置するな

  韓国人元徴用工(旧朝鮮半島出身労働者)の訴訟問題を巡り、文在寅政権は善後策を講じてこなかった。事態悪化をこれ以上放置し、日韓関係の基盤を壊すことは許されない。日本製鉄に元徴用工への賠償を命じた韓国最高裁判決に基づき、日本製鉄の資産を差し押さえる韓国側の手続きが完了した。裁判所の売却命令を経て、資産が現金化されることになる。日本企業に実害が出るのは重大な事態だ。

 日本政府は、現金化に至った場合、対抗措置をとる方針だ。「日韓関係に深刻な影響を招く」と警告している。

 韓国政府は、外交解決の努力を強調した上で、「日本政府がより積極的で誠意ある形で応じることを期待する」として、日本側の歩み寄りを求める立場を示した。

 今後数か月で現金化まで進めば、日韓関係は抜き差しならない状態まで悪化しかねない。問題は一企業にとどまらず、1965年の国交正常化以降の日韓の協力関係そのものにかかわる。文政権はどこまで理解しているのか。

 65年の日韓請求権・経済協力協定は請求権問題の「完全かつ最終的な解決」を定めている。韓国の歴代政権も、元徴用工の扱いも対象に含まれるとみなしてきた。

 だが、2018年の最高裁判決は、日本の植民地支配を「不法」とみなす立場から、元徴用工の慰謝料請求権を認めた。文政権は「三権分立」を口実に、2年近くも解決を先送りにしてきた。

 問題の根底には、「元徴用工は強制的に連行され、奴隷のように働かされた」といった韓国側の誤った認識がある。朝鮮半島での労働力動員が法に基づいて行われ、多くの人が自発的に応募したという史実がゆがめられてきた。

 国内の司法判断や政権の思想的立場で、国家間の約束をほごにはできない。それでは、安定した外交関係は成り立つまい。元徴用工に支払う必要があるなら、韓国の過去の政権が行ったように文政権が責任を持って実行すべきだ。

 日本が対韓輸出管理を厳格化したことについても、文政権は強硬姿勢を保っている。2国間対話での解決よりも、世界貿易機関(WTO)による調停手続きを優先し、対立を深刻化させている。

 北朝鮮が核・ミサイル能力の向上を進め、東アジアの安全保障環境が厳しさを増していることを忘れてはならない。日韓は、北朝鮮の脅威を抑止し、地域の安定を保つという共通の課題を持つ。関係悪化は北朝鮮を利するだけだ。

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