2020年7月28日火曜日


南北境界の排水路抜け、泳いで北に戻る?…感染疑いの男性

 【ソウル=建石剛】北朝鮮に戻り、新型コロナウイルス感染の疑いを持たれている脱北者の男性(24)の越境ルートを巡り、南北境界の厳戒態勢をすり抜けて北朝鮮に泳いで渡った可能性が高いことが明らかになった。韓国では、男性の越境に気づかなかったとして、軍への批判が強まっている。
 韓国国防省は27日、男性が韓国北西部・江華島カンファドの北東部から南北境界の漢江ハンガン河口を渡り、北朝鮮に入ったとの見方を示した。江華島北側は侵入防止の鉄柵が張り巡らされ、カメラなどで常時監視できるが、男性は鉄柵下の排水路から漢江河口に抜け、北朝鮮までの約3キロ・メートルを泳いで渡ったとみられる。
 聯合ニュースなどによると、男性は北朝鮮南西部・開城ケソン市で働いていたが、2016年に南北協力事業の開城工業団地が操業停止となり、生活苦で脱北を決意した。17年8月に江華島西側の喬桐島キョドンド周辺の海上で発見され、韓国軍に救助されて入国した。金浦キムポ市で暮らしていたが、今年6月中旬から知人女性を暴行した容疑で警察の聴取を受けていた。当局はこうした事情から北朝鮮に戻った可能性があるとみて調べている。
 北朝鮮は男性が19日に開城市に戻ったとしているが、韓国軍は26日の北朝鮮の公式報道まで越境を把握できていなかった模様だ。韓国紙は「軍事境界線がお粗末にすり抜けられ、あぜんとする」(中央日報社説)などと批判している。
 一方で、男性の感染の真偽は不明だ。韓国の保健当局は27日、男性が感染者リストに含まれず、感染者の濃厚接触者でもなかったと明らかにした。保健当局が男性の濃厚接触者2人を検査したところ陰性だった。
 北朝鮮は国内では感染者が一人もいないと主張しているが、実際は多数出ているとみられている。韓国からの入境者に感染の疑いをかけることで、感染拡大の責任を韓国側に転嫁し、医療支援を要求する口実に使うとの見方も出ている。

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