埼玉県加須市の認可保育所で、女性保育士が1歳前後の園児に「両生類のハイハイ」と呼ばれる運動を指導する中で、肘で園児の体を床に押しつけるなど、けがにつながりかねない行為を行っていたことが、関係者への取材でわかった。乳幼児の発達に詳しい小児科医は「あまりにも危険で、いつ事故が起こってもおかしくない」と指摘している。
関係者によると、両生類のハイハイは、子どもが床の上をうつぶせの姿勢で足の指の力を使って前に進む運動。音楽に合わせて運動することで、身体的な発達を促すだけでなく、脳を活性化する効果があるとされ、全国の幼稚園や保育園で取り組まれている。
読売新聞は、昨年5月10日に園関係者により撮影された動画を入手した。動画では、園児が泣き声をあげる中、約1分半にわたって女性保育士が園児の体を床に押しつけている。
撮影した園関係者によると、園児は当時1歳前後で「しっかりと歩けるようになっていない園児に両生類のハイハイは危険だと思い、撮影した」と話す。複数の園関係者によると「他の園児にも時々、同様の指導をしていた」という。
動画に映っていた女性保育士の行為について、県小児保健協会に所属する小児科医は「股関節が固定されていない年齢の子の腰から股関節にかけてを押しつけているので、脱臼を起こしてしまう」と指摘する。
県内の別の保育園の代表者は「保護者に対して『こういう保育をしたい』と説明した上での指導なのか」と疑問を呈しているが、今回の加須市の保育園に子どもを預ける保護者の一人は「説明を受けていない」としている。
女性保育士は読売新聞の取材に「子どもたちのためにやっていること。動画を撮った人が保育士だとしたら、私が何のためにやっているのかしっかり伝えられなかったのかもしれない」と話している。
今回の加須市の保育園を巡っては、市が昨年5、6月に臨時監査を実施したところ、当時の主任保育士に「虐待に当たると疑われる行為」があったことが判明。また、市による臨時監査では、市からの委託費(年間約8200万円)などで用意すべき土曜保育の際の給食も提供していなかったほか、評議員会を開いたとする虚偽の報告文書の作成も明らかになった。その後、当時の主任保育士や運営する社会福祉法人の理事長兼園長は退職した。
市地域福祉課は「今回の件について、情報提供はなかった」としている。
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