三井住友DSアセットマネジメント シニアストラテジスト / 市川 雅浩
週刊金融財政事情 2020年7月27日号
2020年前半のドル円相場を振り返ると、1~3月期はコロナショックでボラティリティーが劇的に高まる展開となった。ドル円は1ドル=108円台後半で年始を迎え、2月20日には112円23銭水準までドル高・円安が進行した。その後、新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大すると、ドル売り・円買い圧力が一気に強まり、3月9日には一時101円19銭をつけた。
ただ、ドル円はここから急速にドル高・円安方向へ切り返し、3月24日に111円71銭まで回復した。背景には、市場の混乱で投資家が保有資産を現金化し、米ドルを選好したことがあると推測される。その後、米連邦準備制度理事会(FRB)が米ドル供給策を打ち出すと、米ドル需給の逼迫は解消に向かい、また、多くの国で金融緩和や景気対策が実施され、市場は落ち着きを取り戻した。その結果、4~6月期のドル円は、108円を中心に上下2円程度のレンジ内にとどまった。
少し時間をさかのぼると、ドル円は、16年6月安値と同年11月安値を結ぶ下値支持線と、15年6月高値と17年1月高値を結ぶ上値抵抗線によって、三角保ち合いを形成していた(図表)。しかしながら、18年夏ごろまでに、いずれの線も明確に抜けられず、三角保ち合いは消滅した。その後、ドル円はおおむね105円から115円の間で推移している。
この先、ドル高・円安を促す主な材料として、①ドル需給の逼迫、②米長期金利の上昇──が挙げられる。ただ、①はすでにFRBによる米ドル供給策で解消しており、②は景気回復による長期金利上昇はまだ先と思われ、またFRBも当面、国債購入などで長期金利の上昇抑制に努めるとみられる。そのため、ドル円が前述のレンジの上半分である110円から115円に定着するのは、現時点ではまだ難しいと考えられる。
一方、ドル安・円高を促す材料としては、新型コロナの感染第2波が世界的に広がり、リスクオフの動きが強まることなどが挙げられる。ただ、三角持ち合いが消滅した18年夏ごろから足元まで、105円を超えるドル安・円高の動きは一時的なものにとどまっている。これは、日本だけでなく、米国でも金利低下余地が狭まりつつあり、極端な円高が進みにくくなっていることも一因とみられる。
なお、仮にFRBがマイナス金利政策の導入に踏み切れば、105円を超えてドル安・円高が進む公算は大きくなると思われるが、今のところFRBにその意向はみられない。以上より、ドル円は年内、105円から110円のレンジを中心に推移すると予想する。
(提供:きんざいOnlineより)
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