「通常開催だった今年の1月場所では懸賞は1835本。今場所より500本以上多かった。無観客開催となった3月場所では懸賞を申し込んでいた74社のうち39社が取りやめて1068本となった。5月場所が中止となって、今回の7月場所は観客を4分の1に絞ったとはいえ、観客を入れての6か月ぶりの本場所です。もっと多くの企業から懸賞金を出してもらえると期待したが、新型コロナウイルス感染拡大による影響で、企業も業績が厳しいのでしょう」
懸賞スポンサーの顔ぶれにも変化がみられる。古株では、20年以上にわたって懸賞を出してきた「永谷園」や「伯方の塩」が、無観客だった3月場所も今場所も懸賞を出し続けている一方、社名に因んで大関が登場する一番に懸賞を出してきた酒造メーカー「大関」の名前が3月場所から見当たらなくなった。
「広告効果が判断基準となっているのだろう。公共放送のNHKの大相撲中継では、土俵を懸賞旗が一周する際には、遠くから土俵を映したり、力士のアップに画面が切り替えられたりする。力士名や過去の対戦成績の文字を被せるなどして、特定の企業名が書かれた懸賞旗が映らないように“工夫”がされている。テレビでは場内アナウンスの音声も絞り込まれるため、懸賞は館内向けの宣伝手段。4分の1の観客では費用対効果が見込めないと判断している部分はあるでしょう」(相撲担当記者)
コロナ禍で懸賞が少なくなるのは仕方がないが、それが特定の力士に集中していることで協会関係者は頭を抱えているという。「永谷園」はコマーシャルにも登場する遠藤(前頭筆頭)の取組、「伯方の塩」は大量に塩を撒く照強(前頭7)を中心に懸賞を出している。
一方、今場所から懸賞に新規参入した回転寿司チェーン「くら寿司」は、貴景勝と朝乃山の両大関、人気小兵の炎鵬に懸賞を出している。貴景勝、朝乃山、御嶽海(関脇)といった期待の若手日本人力士を評価するスタンスといえそうだ。こうした現象に影響を受けているように見えるのが、これまで懸賞を独占してきた横綱・白鵬だ。ここ数場所で減少ぶりが際立ってきた。
過去、一取組で最多となる61本の記録を持つ白鵬の取組前には、懸賞旗を持った呼び出しが3回に分けて土俵周りを歩くことも珍しくなかったが、無観客となった3月場所2日目(3月9日)には白鵬と大栄翔との一番への懸賞はたった1本だった。
「今場所の2日目も同じことが起きた。結び前に豊山(前頭筆頭)と対戦した白鵬にかかった懸賞はたった2本。貴景勝(阿武咲戦)の9本、朝乃山(遠藤戦)の17本とは対照的だった。たまたま結びで15本懸っていた鶴竜(大栄翔戦)がこの日から休場したことで、鶴竜戦の6本が白鵬に回されて8本となったが、本来は2本のはずだった。上位の人気力士と対戦することで体裁は保たれているが、ヒール横綱のイメージが定着したためか、白鵬に対する懸賞の減少が顕著になっている」(若手親方)
白鵬は初日の隠岐の海(小結)戦で12本、3日目には人気力士の遠藤戦で17本の懸賞が付くなどして9日目までに108本となったが、同じ9連勝の朝乃山(119本)に後れを取っている。その白鵬は批判を浴びてきた立ち合いでの張り手やカチ上げを序盤は封印。初顔や苦手力士にはつい手が出てしまう日もみられるが、基本的には正攻法で白星を重ねている。遅きに失した感もあるが、イメージ回復は果たされるのか。
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