2020年8月28日金曜日


トランプ氏指名 「偉大な国」の内実が問われる


 型破りの統治スタイルを押し通し、米国と世界を大きく変えたのは確かである。重要なのは、公約の通りに、「偉大な米国の復活」をもたらしたのかどうかだろう。 11月の大統領選に向けて共和党が党大会を開き、再選を目指すトランプ大統領を候補に正式指名した。民主党のバイデン前副大統領との事実上の一騎打ちとなる。
 歴代大統領の多くは官僚や専門家の助言を取り入れて政策を進めてきた。トランプ氏は自らの直感に頼る場面が目立つ。ツイッターによる発信の偏重も独特だ。実業家出身で公職経験がないことを逆手にとり、変化を印象付けた。
 政治を身近に感じさせ、共和党支持層では絶大な人気を誇っている。だが、肝心の政策は、国民生活の改善や国際政治、世界経済の安定において成果を上げたのか。厳しく問われねばなるまい。
 新型コロナウイルス対策は最大の争点となる。トランプ氏は感染拡大の初期段階で「ウイルスは早期に消える」と公言し、マスク着用を拒んだ。米国は医療先進国にもかかわらず、世界最多の感染者数と死者数を記録している。
 トランプ氏は好調な経済を実績に掲げる目算だった。感染防止策による景気冷え込みを嫌い、対応が後手に回ったのは否めない。感染抑止と経済活動の両立の成否が選挙の行方を左右するだろう。
 懸念されるのは、支持者の結束を固めるために、「敵」への恐怖や憎悪をかきたてるトランプ氏の戦術が過激さを増すことだ。
 民主党に対しては「暴力的なデモと無秩序をもたらす極左」とのレッテルを貼った。「米国は外国に搾取されてきた」という独自の世界観に基づき、「バイデン氏が勝てば、中国に国全体が乗っ取られる」との宣伝も強めている。
 国民の融合や国際協調を否定するメッセージは、選挙後もしこりを残すのではないか。
 大統領選の感染防止策として、大幅増が見込まれる郵便投票について、トランプ氏が体制強化を拒んでいるのも疑問だ。遅配が生じれば、大量の票が集計期限に間に合わずに無効となったり、開票作業が遅れたりする恐れがある。
 トランプ氏は、「民主党が郵便投票で不正をたくらんでいる」と主張している。敗北した場合、郵便投票を巡る混乱を「不正」と結びつけ、結果を受け入れないシナリオの布石とも受けとれる。
 公正かつ迅速な投開票は民主主義の基本だ。政略と切り離し、準備に万全を期してもらいたい。

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