午後5時から始まった会見で首相は自らの体調を説明し、辞意を表明した。「政治においては、最も重要なことは、結果を出すことである」と語る場面で目を潤ませ、声を震わせながら途切れ途切れに「拉致問題をこの手で解決できなかったことは痛恨の極み」と語った。冒頭発言の最後は、「国民の皆様、8年近くにわたり本当にありがとうございました」と頭を下げた。
4問目の質問で記者から「いつも使われているプロンプターを使用されていないが、どういう気持ちで会見に臨まれたのか」と問われた。首相は「今日はギリギリまで、原稿が決まっていなかったこともあり、私も推敲(すいこう)しておりましたので、こうした形になりました」と応じた。進退に関する言葉を会見直前まで自ら練ったため、事務方が用意するプロンプターには間に合わなかったようだ。
首相の妻昭恵氏や親友の学校法人理事長の関与が追及された森友学園、加計学園問題について、記者から「十分な説明責任を果たせたか」と問われると、首相は「十分かどうかは、国民の皆様がご判断されるんだろうな」と述べるにとどめた。
会見は約1時間にわたり、首相は立ったまま20問の質問に答えた。会見を終えると、手話通訳者にも頭を下げて会見場を後にした。
首相は今年1月6日から6月18日まで計10回記者会見を行った。例年だと年頭と国会閉会が恒例だが、今年は新型コロナウイルス対応をテーマに2月末からの3カ月間に計8回行った。ただし、プロンプターの原稿通りに延々と読み上げるスタイルは、会見でなく「演説」と皮肉られ、質疑応答の時間が十分に確保できないこともあった。通常国会が閉会した翌日の6月18日に行って以降、新型コロナが再拡大する中でも官邸での正式な会見は開かれず、野党から「首相は逃げている」と批判が出ていた。【笈田直樹】
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