似たような名前の大学を名乗ることは許されるのか―。京都芸術大(京都市左京区)の名称を巡る27日の大阪地裁判決は、原告の京都市立芸術大(西京区)に全国規模の著名性はなく、「市立」の有無で両大学は区別でき、類似していないと結論付けた。
学校名を巡っては、青山学院大学(東京都)を運営する学校法人青山学院が、広島県呉市青山町に2000年に開校した「呉青山学院中学校」を運営する学校法人に名称の使用差し止めを求めた訴訟がある。東京地裁は01年、「『青山学院』の名称は著名になっており、『呉青山学院中学校』という名称は青山学院と関連がある学校だという観念を想起する」などとして、青山学院の訴えを認め、「呉青山」側に名称の使用差し止めを命じた。
今回の大阪地裁判決は京都市立芸大に青山学院大ほどの全国的な著名性はないと判断したと言える。また「青山学院」には固有名詞としての強い識別力があるが、市立芸大の「京都」や「芸術」は所在地や学術分野を示す一般名詞で、他大学と区別するには必須ではないと退けられた。
市立芸大は今月21日、「京都芸術大学」の名称は商標権を侵害しているとして、使用差し止めを求める仮処分を大阪地裁に申し立てた。今回の判決の影響は避けられないとみられ、立場は厳しくなったと言えそうだ。
■京都市長「混乱解消せず」
京都造形芸術大から校名変更した京都芸術大学(京都市左京区)を運営する学校法人瓜生山学園に対し、京都市立芸術大(西京区)が大学名の使用差し止めを求めた訴訟の判決が27日あり、訴えが棄却された。市立芸大の設置者である京都市の門川大作市長は「残念」と述べ、「校名の混乱は解消しない」と判決への不満をあらわにした。報道各社の取材に答えた。
門川市長は大阪地裁での判決から約2時間後の午後3時ごろ、険しい顔つきで姿を現した。市立芸大敗訴の判決について「卒業生や大学関係者が校名の混乱を非常に心配している。私も同じだ。大学の名前は明確に識別できるのが大前提だと考えている」と主張。取材に応じた約10分の間、被告側を「旧京都造形芸術大学」と呼び、一度も「京都芸術大学」との名称は口にしなかった。
市は「京都芸術大学」の名称使用が始まった今年4月、市民しんぶんで市立芸大を表紙で扱って特集するなど「側面支援」にも動いた。特集では「京都芸大」という略称を目立たせ、アピールにも一役買った。
市がこれだけ力を入れるのは、市立芸大を2023年度に下京区のJR京都駅近くに移転させる計画を進めているからだ。市内中心部への移転を契機に大学の発展に弾みを付けたいところだけに、似たような大学名を認める判決の衝撃は大きい。市幹部は「移転整備は着実に進めるが、大学運営への影響がないとは言えない」と肩を落とす。
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