2020年8月28日金曜日

東京都品川区がホームページで公表している陽性率の推移© 読売新聞 東京都品川区がホームページで公表している陽性率の推移  新型コロナウイルスの陽性率について、全国20政令市と東京23区の計43自治体のうち、22自治体がホームページ(HP)で公表している一方、21自治体は非公表とし、対応が割れていることが分かった。陽性率の公表は地域ごとの感染状況を住民に伝えるメリットがある反面、検査数の把握が障壁となって苦慮する自治体も少なくない。
■結果は真っ二つ
 厚生労働省はHPで都道府県ごとの陽性率を公表しており、8月10~16日の全国の陽性率(退院時の検査数などを含む)は5・9%と、ピーク時(4月6~12日)の8・8%に比べて低下している。
 ただ、陽性率を市区町村レベルで公表するかどうかは各自治体に対応が委ねられる。読売新聞は今月、全20政令市と東京23区を対象に、陽性率を公表しているかどうかを取材した。
その結果、横浜や大阪、熊本など12政令市と東京10区が「公表している」と答えた一方、仙台や京都、福岡など8政令市と東京13区は「公表していない」と回答し、ほぼ真っ二つに割れた対応が浮かび上がった。
■市民に注意促す
 公表する自治体の多くは、日々変化する感染状況を住民に情報提供する意義を理由に挙げた。
 「区民の関心事項」とする品川区は2月以降の週単位の陽性率を折れ線グラフで表し、HPに掲載している。5月に5%を切った陽性率は、6~7月には再び上昇傾向に。区保健所の担当者は「週を追うごとに陽性率が高まっていることを示せれば、注意を促しやすい。さらに、区ごとの公表で区民は身近な問題と受け止め、各自に予防行動をとってもらう狙いもある」と話す。
 千葉市は5月中旬から公表を始めた。全国の自治体は日々、陽性者(感染者)の人数を公表するが、市の担当者は「検査が増えれば感染者は増加しがち。感染者数の公表だけでは、状況が的確に伝わらない可能性がある」と言う。その点、感染者の割合を示す陽性率は、実態に即した感染状況や傾向を把握しやすい。担当者は「感染者数が独り歩きして住民が過度に恐れることを防ぐ効果がある」と話す。北九州市も「陽性率が高くなれば、市民に緊張感を持ってもらえるし、下がれば安心につながる」とする。
■「負担大きい」
 非公表の自治体は「検査数を確認しきれず、実態とのずれが生じる可能性がある」などの理由を挙げた。
 検査は、各地の保健所や医療機関などで実施される。だが、医療機関から検査数が報告されない自治体もあり、「全検査数が把握できず、正確な陽性率が出せない」(江戸川区)という。
 また、感染が全国的に再拡大し、検査数も増える中、「医療機関などに逐一、検査結果の報告を求めるのは負担が大きい」(新潟市)といった声も上がる。
 ただ、地域住民の陽性率への関心は高い。練馬区は「他の区は公表しているのに、なぜ公表しないのか」との声が区民から多く寄せられ、公表を検討している。
 菅原えりさ・東京医療保健大教授(感染制御学)は「陽性率の公表は、住民たちが自分の地域社会での感染状況を知る手がかりになる。全検査数と結果が迅速に自治体へ報告される体制を整えるのが望ましいが、まずは市や区が独自に実施した検査分の陽性率だけでも公表すれば、住民の感染予防にも役立つ」と話す。
 ◆陽性率=ウイルス感染の検査をした人数に占める陽性者(感染者)の割合。1000人の検査で50人が感染者だと陽性率は5%となる。陽性率が高まると未受検者の間でも感染が拡大していると想定され、検査数を増やす必要がある。逆に、陽性率が低いと感染状況も落ち着く指標となる。
■行政区別の感染者数 公表7市のみ
 50万人以上の人口を抱える政令市は、さらに行政区ごとに細分化される。取材では、その行政区ごとに感染者数を公表するか否かの対応の差も鮮明になった。
 さいたまや千葉、名古屋などの7市は、行政区ごとの感染者数をHPに掲載。「青葉区175人」「栄区31人」(8月21日時点)などと累計感染者数を公表する横浜市の担当者は「誰でも感染しうる問題だと知ってほしい」と意図を語る。
 さいたま市も、市民の要望を受けて行政区単位の累計感染者数をHPに掲載する。担当者は「感染者がどの地域で多いかを把握し、対策を立てやすい」と話す。
 一方、静岡や北九州など13市は公表していない。大阪市は「特定地域の住民への偏見・差別を招きかねない」と説明。神戸市も「人口が集中する行政区の感染者数が多くなる」とする。

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