「国民生活が立ち行かなくなることは避け、絶対に感染防止するという強い決意で取り組んでいる」。菅氏は2日のNHK番組でこう強調し、感染拡大防止と社会経済活動の両立に取り組む政府の考えを重ねて強調した。菅氏がテレビ番組の出演・収録をこなすのは、先月半ば以降4回目。雑誌のインタビューなどにも応じ、自身が矢面に立って政権批判を和らげる狙いもあるようだ。
テレビ番組に出演する際の菅氏は平日に行われる記者会見と「違う顔」を見せる。7月30日のTBSのCS番組収録では今秋の衆院解散・総選挙について「なかなか難しいのではないか」と言及。記者会見では触れたがらない政局がらみの質問にも踏み込み、新たな政府方針を打ち出すこともある。ポスト安倍への意欲を一貫して否定するが、一連の言動が意欲の表れとも受け止められている。
菅氏はコロナ対応をめぐって一時、首相との間で溝があるとされていた。政権の危機管理を担う菅氏が政府の一斉休校要請や布マスク配布などの政策判断に関わっていなかったからだ。
だが6月19日に麻生太郎副総理兼財務相や甘利明自民党税調会長を交えて首相と会食し、改めて結束を確認。首相は月刊誌「Hanada」9月号のインタビュー記事の中で菅氏を「(ポスト安倍の)有力な候補者の一人であることは間違いない」と持ち上げた。
菅氏に近いベテラン議員は「流れが変わった。コロナ禍の中、日本のためには首相と菅氏がもう一度がっちり組むことが重要だ」と語る。党内でも次期総裁候補として菅氏に期待する声がある。自民党の二階俊博幹事長も安倍政権を中枢で支え続けた菅氏の手腕を高く評価している。
ただ、新型コロナ対策をめぐり、安倍政権は厳しい世論にさらされている。今後感染の再拡大をコントロールできない事態に陥れば、社会経済活動再開の旗振り役を務める菅氏に批判が集まりかねない。菅氏にとっては至難の時が続くことになりそうだ。(大島悠亮)
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