テレワーク、再び「7割」要請へ…西村氏「後戻りせず維持して」
新型コロナウイルスの感染再拡大を受けて、政府は近くテレワークで働く社員の割合を7割まで高めるように経済界や各企業に再び要請する。大手企業やIT業界では取り組みが進むが、緊急事態宣言が出された4~5月でも3割に達しておらず、対応の遅れが目立つ中小企業を中心に達成は容易でない。
富士通は7月、国内の社員約8万人はテレワークを原則とする方針を決めた。新型コロナの感染が収束しても恒常的に続ける。通勤定期代の支給をやめ、代わりに在宅勤務で負担が増える電気代などとして月5000円の補助を始めた。
GMOインターネットグループや日立製作所も、テレワーク7割をすでに達成済みか、今後、全面的なテレワークを導入する予定だ。いずれもITが主力事業のため、設備などの面で制約が少ない。
伊藤忠商事は7月末、国内全社員約3000人を原則在宅勤務とすると発表した。4~5月、全社員を対象にテレワークを行い、緊急事態宣言の解除を受けて出社を基本とする体制に戻したが、7月には感染拡大を受けて出社を半数に減らすなど、感染状況に応じて小まめな変更を強いられている。
西村経済再生相は7月26日の記者会見で、緊急事態宣言時に比べて在宅勤務者が減ったと指摘し、「ぜひテレワークの7割(実施)を後戻りすることなく、維持してほしい」とくぎを刺した。近く経団連や日本商工会議所(日商)など経済3団体に申し入れる意向だ。
だが、中小企業を含めた日本全体で見れば、大きく遅れている。
厚生労働省とLINEが行った全国調査によると、緊急事態宣言発令中の4月中旬、企画や開発など事務職に限っても、テレワークを行った割合は27%にとどまった。都道府県別で最も高い東京都(52%)や2位の神奈川県(44%)でも7割に遠く及ばず、33道県は1割に満たなかった。
工場や作業場などを抱える企業は制約が大きい。東京電力ホールディングスは「(発電所などの)現場があり、会社全体で7割を達成するのは厳しい」(広報)と話す。
中小企業はさらに難しい。日本商工会議所で感染症対策の責任者を務める山内清行氏は、「中小企業は1人の社員が営業と経理を担うなど、業務の切り分けが難しく在宅勤務がしにくい」と指摘する。営業担当者などの出勤を減らせば業績悪化に直結するケースも多いとみられ、在宅勤務のためのシステム投資をする余裕やノウハウも少ない。「給付金など政府から資金支援が伴わないと、テレワークの7割実施などとても果たせない」(中小企業団体幹部)との不満も出ている。
ただ、日本経済の今後の成長を考えれば、テレワーク化は避けて通れないとみられる。総務省が16年に行った調査では、テレワークを導入している企業の労働生産性は、非導入企業に比べて1・6倍高くなったという。
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