2020年7月21日火曜日

なかなか調子が上がってこない巨人の坂本勇人 (c)朝日新聞社© AERA dot. 提供 なかなか調子が上がってこない巨人の坂本勇人 (c)朝日新聞社  プロ野球のペナントレースも開幕から約1カ月が経過し、徐々に今シーズンのパワーバランスが見えつつある。しかし開幕ダッシュに成功した球団でも、投手、野手ともに決して万全と言える状況ではない。そこで12球団が抱える不安要素、ネガティブな要因を洗い出してみたいと思う。前回のパ・リーグに続いて今回はセ・リーグの6球団だ。
・巨人:抑え投手不在と坂本勇人の状態
順調に首位を走る巨人だが、最大の不安要素は抑え投手だ。デラロサが故障で離脱した後に原辰徳監督が指名したのは沢村拓一だったが不安定な投球が続き、現在は中川皓太が抑えに回っている。中川はここまで安定した投球を見せているが、そうなると8回を任せられる投手が不在となる。デラロサの離脱が長引くようであれば、先発からの配置転換や二軍からの抜擢を検討する必要がありそうだ。
野手で心配なのが坂本勇人の調子が上がってこないこと。四球を多く選んでチャンスを作り、勝負強さは見せているものの、昨年までと比べてスイングの鈍さが目立つ。岡本和真の調子が落ちてくる前に本来の姿を取り戻したいところだ。
・ヤクルト:手薄な投手陣と不振が続く山田哲人
昨年の最下位から一転して今年は好スタートを切ったが、防御率はリーグ5位と投手力にはまだまだ課題が多い。小川泰弘がリーグトップの4勝をマークしているものの完全に打線の援護に助けられたものであり、開幕投手の石川雅規も未勝利のまま二軍調整となった。ここまで防御率0点台のスアレスもコントロールは不安定で、安心して見ていられる存在とは言い難い。リリーフでは2年目の清水昇、4年目の寺島成輝が成長を見せているのは好材料だが、何とかやりくりして凌いでいるというのが現状だ。
野手で心配なのが山田哲人だ。開幕当初からもうひとつ調子が上がらず、7月15日からは3試合連続で欠場となっている。疲労の蓄積を考慮してとのことで、早めに手を打ったのは悪いことではないが、不振が続くようだとチームに与える影響は極めて大きいと言えるだろう。
・阪神:得点力不足と起爆剤となる若手野手の不在
開幕で大きく躓いたものの、7月に入って調子を上げて勝率5割復帰を果たした。課題はここ数年続いている得点力不足。ボーアと大山悠輔に当たりが出てきたのは好材料だが、もうひとつ打線が機能していない。昨年大活躍を見せた近本光司が打率1割台と低迷し、チャンスを作れていないのも痛いところだ。
そしてそれ以上に問題なのが抜擢する若手人材が不足していること。25歳以下の若手で一軍の戦力となっている選手は代走、守備要員の植田海だけ。二軍でも大砲候補となると高校卒ルーキーの井上広大しか見当たらない。強みだったリリーフ陣も抑えの藤川球児が打ち込まれて二軍調整となっており、馬場皐輔やスアレスなどの新しい顔ぶれの台頭が必要となりそうだ。
・DeNA:リリーフ陣の不振と首脳陣への不信感
開幕直後は5連勝など好調なスタートを切ったが、7月に入って失速して4位に沈んでいる。最大の誤算はリリーフ陣の不振。抑えの山崎康晃、セットアッパーのパットン、三嶋一輝が揃って打ち込まれており、安定しているのは石田健大だけというのが現状だ。先発は平良拳太郎がブレイクしているが、故障者が多く、十分に揃っているとは言えない。
打撃陣もチーム打率はリーグ2位ながら得点はリーグ4位と効率の悪さが目立つ。そして、ここへ来てラミレス監督の選手起用、采配、コメントに対して各方面から不満が噴出してきたのも大きな不安要素と言える。細かい野球ではなく、個々の力で圧倒する野球を目指しているように見えるだけに、首脳陣に対する選手の不信感が募るようだと致命傷になることも考えられるだろう。
・広島:抑え投手不在による接戦の弱さと走塁に対する意識低下
開幕からのビジター11試合を勝率5割(5勝5敗1分)で乗り切ったものの、得意である本拠地のマツダスタジアムで大きく負け越し、現時点で借金4の5位。大きな問題となっているのがリリーフ陣だ。開幕当時抑えだったスコットは不振でその座を外れ、現在は菊池保則が務めているが安定感はもうひとつだ。そのせいもあって、ここまで1点差ゲームは4戦全敗。引き分けの2試合も8回以降に追いつかれて逃げきれなかったケースとなっている。
打線は絶好調の堂林翔太と日本の4番に成長した鈴木誠也が引っ張っており、チーム打率はリーグトップの数字を誇っているが、伝統である機動力を生かした攻撃は鳴りを潜めており、走塁ミスも目立つ。今後打線の調子が落ちるようだと、更に苦しい状況になりそうだ。
・中日:先発投手陣の伸び悩みと打線の繋がり不足
チーム打率がリーグ5位であることに加え、チーム防御率、平均得点、平均失点全てにおいてリーグ6位と、ここまでなるべくして最下位となっている状況だ。開幕投手の大野雄大がいまだに0勝で、飛躍が期待された若手の梅津晃大、山本拓実、勝野昌慶の三人も揃って結果を残すことができていない。R.マルティネス、福敬登、祖父江大輔などのリリーフ陣は奮闘しているが、それだけではカバーできていないのが現状だ。
攻撃陣も主砲のビシエド、リードオフマンの大島洋平は結果を残しているが、昨年と変わらず打線の繋がりを欠いており、出塁率も長打率も低い。更に投手では柳裕也、野手では高橋周平と主力が故障で離脱しているのも大きな痛手だ。ルーキーの石川昂弥、岡林勇希を一軍で抜擢するなどしているが、今年もBクラス脱出は厳しいと言わざるを得ないだろう。
(文・西尾典文)
●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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