2020年7月21日火曜日

強風に雷雨に中断と厳しいコンディションの中で見事なプレー。2位のライアン・パーマー(米国)に3打差をつけての圧勝を飾り世界ランキング1位の座についたジョン・ラーム(スペイン)。ところが優勝にこそ影響しなかったが、この日もっとも見せ場となった大事なショットにホールアウト後、“ペナルティー”が科せられることとなったのはちょっと残念だった。
問題のショットはラームが3打リードで迎えた16番パー3。グリーン左の深いラフから打った第2打のアプローチショットは、ラインに乗ってカップに沈んだ。無観客試合だから大歓声とは行かなかったが、ラームは大きくガッツポーズ。このバーディで勝利を確信したといってよい。なぜなら残り2ホールで4打リードに広げたのだから。
しかし、このチップショットでは、ラームが打つ前に何度がクラブをソールした際にわずかにボールが動いたことが放映中のCBSの映像で確認された。結果的にはこれで“2罰打”を受けることになるのだが、動いたといってもおそらく数ミリ、解説をしていたニック・ファルド(イングランド)は「1ディンプル動いた」というくらいだ。ライが改善されたわけでもなく、ラームはまったく気づかなかった。競技委員が映像を確認して協議。ペナルティーが伝えられたのはラームのホールアウト後だった。
ここで問題なのは2014年から改正されたルール。「プレー中にボールが動いたときに“裸眼”で確認できない動きは罰打とならない」というもの。このルールは当時、毎ショットがテレビで映し出されるタイガー・ウッズ(米国)ばかりが罰打を受けることに公平性が欠けると論争が起こっていた時期に改正されたものだ。
また、テレビが高画質になり、わずかな動きも映し出されることから視聴者からの問い合わせも相次いだ。プレー中の選手が“裸眼”で確認できないことに“罰打”というのは非合理だというわけだ。今回のラームのボールはわずかだが確かに動いていた。しかしテレビカメラで大きくズームしていたからこそ分かるもの、これが“裸眼”で確認できたかというとかなり疑問だ。
優勝が決まってからインタビューで“罰打”を知らされたラーム。とても驚いた表情をみせたが「とても紳士的に罰打を受け入れた」という。優勝にも世界ランキング1位にもなんら影響がなかったのだが、しかしながら本当に罰打が必要だったのか、さらに18番ティでは競技委員はラームに伝えることができたのだが「その時点で5打差だったから伝えなかった。2打、3打差であればまた違っていたかもしれない」というが、「公平性から考えるとそれも違う気がする」とアナリストのイアン・ベーカーフィンチ(オーストラリア)。米ゴルフチャンネルの解説をしているブランデル・シャンブリーも裁定に異論を唱えた。
今大会2日目にはブライソン・デシャンボー(米国)が競技委員の裁定に怒り、無言でコースを後にしたばかり。最終日の裁定がラームの勝敗に影響を与えなかったことだけが幸いだったのかもしれない。(文・武川玲子=米国在住)

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