2020年7月21日火曜日

サウナの効用<5>「ととのう」感覚 謎に迫る

[読者会員限定
「主役は水風呂!…「マンガ サ道」タナカカツキさんに聞く」の動画はこちら


 サウナと水風呂に入った後、イスに座って休憩。気持ちの良さから体がジーンとしびれてきた主人公が、キラキラした万華鏡の中で感極まって叫ぶ。
 「ととのった~!」
 「サウナー」と呼ばれるサウナを愛好する人々の日常を描き、テレビドラマにもなったタナカカツキさんの人気漫画『マンガ サ道』でおなじみのシーンだ。
 「ととのう」とは、サウナ→水風呂→外気浴というサイクルを通じ、心身ともに深くリラックスした状態になることを言う。
 なぜ「ととのう」と感じるのか。サウナを愛好する医師らでつくる「日本サウナ学会」代表理事で、慶大特任助教の加藤容崇やすたかさんは「自律神経がカギを握っている」と解説する。
 血液の循環など体の機能をコントロールする自律神経。緊張すると優位になる交感神経と、リラックスすると優位になる副交感神経からなり、シーソーのようにバランスをとっている。
 熱いサウナと冷たい水風呂は、どちらも体には過酷な環境だ。そこに適応するため、交感神経が大きく優位になる。その際、体内に興奮物質が分泌される。
 その後、外気浴をすると、体は危機を脱したと感じ、日常生活では感じられないほど一気に副交感神経が優位になり、深くリラックスする。水風呂を出てから約2分間は、体内の興奮物質の効果も残るという。
 加藤さんは「興奮とリラックスという本来、共存しない感覚が一緒になると、『ととのった』と感じるのではないか」と推測する。
 北海道帯広市の林克彦さん(44)も、「ととのう」という感覚にはまった一人だ。「脳が雲のようにふわふわ浮かんでいるように感じる」と語る。もとはサウナ嫌いだったが、2018年に加藤さんと出会い、サウナの魅力を教わった。
 「ととのった」と感じるメカニズムは科学的に解明されたわけではない。その謎に迫ろうと、加藤さんは19年、サウナに入る前後で脳がどう変化するかを調べる“研究”を行った。
 対象は林さんらボランティアの30人。加藤さんの勤務先の一つの北斗病院(北海道帯広市)で、「MEG」と呼ばれる精密な脳波計を使い、サウナに入る前後で脳のどの部分がどう変化したかを調べた。
 その結果、リラックスした時に出る脳波が全員「正常化」していた。感覚をつかさどる脳の領域の「活動」も確認できた。これらは創造性が高まる状態を意味するが、なぜそうなるのかは分かっていない。
 本格的な研究への意欲を見せる加藤さん。「サウナによる体の変化の謎を解明し、健康増進につながる入り方を追求したい」

0 件のコメント:

コメントを投稿