サウナの効用<5>「ととのう」感覚 謎に迫る
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「主役は水風呂!…「マンガ サ道」タナカカツキさんに聞く」の動画はこちら
サウナと水風呂に入った後、イスに座って休憩。気持ちの良さから体がジーンとしびれてきた主人公が、キラキラした万華鏡の中で感極まって叫ぶ。
「ととのった~!」
「サウナー」と呼ばれるサウナを愛好する人々の日常を描き、テレビドラマにもなったタナカカツキさんの人気漫画『マンガ サ道』でおなじみのシーンだ。
「ととのう」とは、サウナ→水風呂→外気浴というサイクルを通じ、心身ともに深くリラックスした状態になることを言う。
なぜ「ととのう」と感じるのか。サウナを愛好する医師らでつくる「日本サウナ学会」代表理事で、慶大特任助教の加藤容崇 さんは「自律神経がカギを握っている」と解説する。
血液の循環など体の機能をコントロールする自律神経。緊張すると優位になる交感神経と、リラックスすると優位になる副交感神経からなり、シーソーのようにバランスをとっている。
熱いサウナと冷たい水風呂は、どちらも体には過酷な環境だ。そこに適応するため、交感神経が大きく優位になる。その際、体内に興奮物質が分泌される。
その後、外気浴をすると、体は危機を脱したと感じ、日常生活では感じられないほど一気に副交感神経が優位になり、深くリラックスする。水風呂を出てから約2分間は、体内の興奮物質の効果も残るという。
加藤さんは「興奮とリラックスという本来、共存しない感覚が一緒になると、『ととのった』と感じるのではないか」と推測する。
北海道帯広市の林克彦さん(44)も、「ととのう」という感覚にはまった一人だ。「脳が雲のようにふわふわ浮かんでいるように感じる」と語る。もとはサウナ嫌いだったが、2018年に加藤さんと出会い、サウナの魅力を教わった。
「ととのった」と感じるメカニズムは科学的に解明されたわけではない。その謎に迫ろうと、加藤さんは19年、サウナに入る前後で脳がどう変化するかを調べる“研究”を行った。
対象は林さんらボランティアの30人。加藤さんの勤務先の一つの北斗病院(北海道帯広市)で、「MEG」と呼ばれる精密な脳波計を使い、サウナに入る前後で脳のどの部分がどう変化したかを調べた。
その結果、リラックスした時に出る脳波が全員「正常化」していた。感覚をつかさどる脳の領域の「活動」も確認できた。これらは創造性が高まる状態を意味するが、なぜそうなるのかは分かっていない。
本格的な研究への意欲を見せる加藤さん。「サウナによる体の変化の謎を解明し、健康増進につながる入り方を追求したい」
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