2020年7月21日火曜日

サウナの効用<4>「低温」療法 心機能を改善

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専用のサウナ室で和温療法を受ける本沢さん(左)と、様子を確かめる豊田さん(栃木県壬生町の独協医大病院で)
専用のサウナ室で和温療法を受ける本沢さん(左)と、様子を確かめる豊田さん(栃木県壬生町の独協医大病院で)
 健康維持やストレス発散に使われるサウナは、医療現場でも応用されている。専用の低温サウナ室で心地よい汗を流した後、安静にして保温する「和温療法」だ。心臓や血管の機能を改善させる効果がある。
 「以前はすぐに息が切れたのに、問題なく歩けるようになった。治療中は寝てしまうほど気持ちがいい」。栃木県壬生町の独協医大病院で和温療法を受ける本沢ほんざわ利夫さん(81)(栃木県栃木市)は、そう語る。
 本沢さんは、心臓が拡大してポンプ機能が低下する拡張型心筋症で、2年ほど前に入院。退院後は週に1回、この治療のために通院している。入院時はほぼ寝たきりだったという。
 和温療法は、天井から床まで60度に設定した専用サウナ室で全身を15分間温めた後、30分間毛布にくるまって保温し、最後に汗で失われた分だけ水分をとる治療法だ。体の内部の温度が1~1・2度上がるため、指先などの末梢まっしょう血管が広がり、重症の心不全や、足の血管が詰まる閉塞へいそく性動脈硬化症などに効果がある。
 血圧を大きく上昇させる高温サウナは、心臓病の人には向かない。同大准教授の豊田茂さん(心臓・血管内科)は「低温の和温療法はリラックスでき、血圧の変化もほとんどない。運動ができない高齢者らも安全に使える」と説明する。
 同大など19の医療機関は2011~14年、和温療法の効果を調べる臨床研究を行った。重い心不全の50~80歳代の男女149人が参加。〈1〉薬物療法に和温療法を加えたグループ〈2〉薬物療法だけのグループ――に分け、10日間の治療を受ける前と後の変化を調べた。
 その結果、6分間に歩ける距離や息苦しさなどの自覚症状は、〈1〉のグループのみ統計学的に明確に改善していることを示した。
 和温療法は、同大特任教授で、自ら設立した和温療法研究所の所長を務める鄭忠和ていちゅうわさんが開発した。
 鄭さんは約30年前、鹿児島県の病院で「死ぬまでに一度温泉に入りたい」と切望する重症心不全の末期患者と出会った。入浴は禁忌とされていたが、鄭さんらスタッフ立ち会いの下、自動昇降式の浴槽で温泉入浴を続けると症状は改善。2か月後に退院できた。
 こうした経験から心不全患者への温泉治療に着目。温泉は水圧の影響が懸念されたため、サウナの活用に行き着いたという。
 和温療法は現在、全国80か所以上の医療機関で導入されている。4月からは、一定の条件を満たす病院に入院中の重症心不全患者に限り、公的医療保険が適用された。鄭さんは「薬のような副作用もなく、患者に優しいのが和温療法。ほかの病気にも応用できるようにしたい」と話す。

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