2020年7月25日土曜日

中国、総領事館の閉鎖通告で米に対抗措置…情報収集活動をけん制


 【北京=竹内誠一郎】中国政府が24日、米国への対抗措置として四川省成都市にある米総領事館の閉鎖を通告したのは、米側の圧力に譲歩しない姿勢を示すとともに、大使館を含め中国本土に6か所ある在外公館を拠点に米国が行っている情報収集活動をけん制する狙いがあるようだ。
 中国中央テレビは24日、閉鎖通告を受けた成都の米総領事館から異例の実況中継を行い、スタッフらが荷物の移動などに追われる場面を伝えた。テキサス州ヒューストンの中国総領事館が閉鎖命令を受け、機密書類を焼却していたという米側報道を意識した模様だ。
 米中は、1980年調印の領事条約に基づき、相手国にそれぞれ5か所の総領事館を設置していた。中国政府は、成都の米総領事館閉鎖はヒューストンの総領事館閉鎖への「対等の措置」だと主張している。
 成都の米総領事館は2012年2月、重慶市トップだった薄煕来ボーシーライ元市共産党委員会書記と対立した王立軍ワンリージュン元市公安局長が、米国の保護を求めて駆け込んだ事件の舞台として知られる。王氏は駆け込みから1日で中国当局に引き渡されたが、上司だった薄氏ら当時の指導部メンバーに関する大量の内部資料を持ち込んでいたとされる。
 各国の在外公館は自国民の保護やビザ発給などの任務とともに、ウィーン条約が定める在外公館の治外法権を背景に相手国の情報収集も担う。成都の総領事館は駆け込み事件で注目を集めただけでなく、少数民族問題で敏感な地域となるチベット自治区や西昌衛星発射センター、核兵器研究施設(綿陽市)が置かれる四川省などを管轄。中国側は「これまでも情報収集活動に神経をとがらせてきた」(共産党関係者)という。
 閉鎖する総領事館を成都とした背景には、ヒューストンの総領事館を「スパイ活動と知的財産窃取の拠点だった」と批判する米側に対抗する思惑があるとみられる。

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