2020年7月25日土曜日


【独自】東京医大前理事長 入試謝礼1億申告漏れ…国税指摘 裏口入学分も


 2018年に医学部の不正入試問題が発覚した東京医科大(東京)の臼井正彦前理事長(79)が、東京国税局の税務調査で、同年までの5年間に計約1億円の申告漏れを指摘されたことが関係者の話でわかった。医学部入試で有利な取り計らいを依頼された受験生の親などから個人的に受け取った謝礼を申告していなかった。不正に得点が加算された「裏口入学」の受験生分も含まれるという。
 同大の内部調査委員会は18年8月、一連の不正は臼井氏が主導したと認定。謝礼の存在にも言及したが金額は判明していなかった。
 関係者によると、同国税局は不正入試問題を受けた税務調査で、受験生の親などが臼井氏らに宛てた手紙や、特定の受験生の名前や受験番号、紹介者などが記されたメモなどを確認。臼井氏らにも説明を求めた結果、臼井氏が18年までの5年間に、受験生の親などから入試前後に1年あたり約2000万円を謝礼として受け取っていたと認定した。
 鈴木まもる前学長(71)についても、同様に謝礼を受け取ったとして、同年までの4年間に数百万円の申告漏れを指摘したという。
 同大の第三者委員会の報告書によると、18年までの5年間に不正に得点が加算された受験生は延べ約60人に上り、多くが同大OBの子弟だった。同国税局は、謝礼には、不正な得点調整で合格した受験生分も含まれていたとみている。
 臼井、鈴木両氏は大学からの報酬などは申告していたが、謝礼については一切申告していなかったという。過少申告加算税を含む所得税の追徴税額は臼井氏が約4000万円、鈴木氏が数百万円。いずれも既に修正申告したとみられる。
 臼井氏は文書での取材に回答がなく、鈴木氏の代理人弁護士は「鈴木氏に取材を受ける意思はない」としている。
 臼井氏は08年に学長、13年に理事長に就任。鈴木氏は14年から学長を務めた。文部科学省の私大支援事業を巡る汚職事件で、18年7月にいずれも引責辞任した。両氏は受託収賄罪で起訴された同省元局長(61)への贈賄罪で起訴されている。
 ◆不正入試問題=東京医科大が医学部入試で、女子や浪人回数の多い受験生の得点を一律に減点し、合格者数を抑制していたほか、特定の受験生の得点を不正に加算していたことが発覚。文部科学省の全国調査で、他大学の医学部入試でも、女子や浪人差別、特定の受験生の優遇が相次いで判明した。
【解説】不正入試対策 実効性を
 東京医科大の臼井正彦・前理事長(79)が、受験生側から個人的に謝礼を受領したとして約1億円の申告漏れを指摘された。国税当局は、「裏口入学」の見返りが含まれていたとみる。
 実際、臼井氏は特定の受験生の得点を加算する不正を主導してきた。課税時効の関係で、国税当局の指摘は5年分にとどまるが、不正は1996年頃から続いていたことが判明している。
 同大の第三者委員会は、不正は大学への寄付金とも結びついていたと指摘した。ある年には、臼井氏のメモにあった受験生11人が全員合格し、10人の保護者が計1億4100万円を寄付していた。うち7人は、得点が加算された疑いがある。
 帝京大が入試への口利きを巡り、受験生の保護者から合格発表前に多額の寄付金を受領していた問題が発覚したのは、2001年だった。文部科学省は02年、事務次官通知で事前の保護者との接触を制限し、入試に関連した寄付の受領も禁じたが、通知は実効性に欠けていたことになる。
 入試に絡んだ金銭の授受が、公正な入試を著しく阻害するのは言うまでもない。一連の不正入試問題を受け、同省は大学入試の実施要項に、保護者との事前接触の制限を初めて明記した。東京医科大も外部監査委員によるチェックなど様々な再発防止策を講じた。
 だが、どんな対策にも抜け道は残る。また、入試に携わる側に順法意識がなければ、実効性は保てない。長年、トップの不正を許してきた同大には、それを自覚した上で、防止策を不断に見直していくことが求められる。(吉沢邦彦)

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