2020年7月25日土曜日

嘱託殺人容疑の2医師、安易に犯行「女性に寄り添ったか」専門家ら非難© 産経新聞社 嘱託殺人容疑の2医師、安易に犯行「女性に寄り添ったか」専門家ら非難  ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患っていた京都市の女性をめぐる嘱託殺人事件で、逮捕された医師2人は女性の主治医でなく、犯行当日に初めて女性宅を訪れていたとみられている。法整備の議論以前に、医師として女性にどれだけ寄り添ってきたか疑問があり、専門家や難病の支援団体の関係者らからは「あまりに安易だ」などと厳しい批判が寄せられている。
 女性に寄り添ったか
 「そもそも日本では医師が致死薬を投与するなどの『安楽死』は認められていないが、法的に認められている海外のケースと比較してもあまりに安易で危険」

今回の事件で逮捕された大久保愉一容疑者(42)と山本直樹容疑者(43)を指弾するのは、「死ぬ権利はあるか」の著書がある横浜市立大の有馬斉(ひとし)准教授(倫理学)だ。
 有馬氏によると、たとえば安楽死が合法化されているオランダでは、患者やその家族と長年つながりがある「かかりつけ医」が患者本人の心の揺れ動きや病状などを総合的にみて、慎重に判断することになっているという。
 逮捕された2人は女性の主治医でなく、やり取りもSNSで行われていたとみられることから、有馬氏は「今回の医師らは、患者の精神状況や医学的状況をよく知りもせずに薬物を投与したと思われる。熟慮を重ねた行為ではない」と非難する。
 その上で、厳しい病状で闘病生活を送る難病患者らについて「『死にたい』と思い、落ち込みが激しい患者も、周囲や担当医師らの寄り添いにより前向きな気持ちになっていく場合もある」と指摘。「今回の医師らが女性に寄り添い、ほかに選択肢が本当にないのかなどについて丁寧に話し合いを重ねていたとは思えず、非常に問題だ」と話した。
 「命に優劣」許せぬ
 難病を患っていたり障害があったりする人の自立を支援する「日本自立生活センター」(京都市)のスタッフで、自身も筋肉が徐々に萎縮していく難病、遠位型ミオパチーの患者でもある岡山祐美さん(40)は、相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で平成28年7月に入所者ら45人が殺傷された事件を思い起こしたという。
 「(今回の医師らも)障害があるなら死なせてもいいという考え。第三者によって命に優劣がつけられることにつながるもので、正直、またかという思いだ」
 病に侵され、体が動かなくなることに絶望して死を望んだ女性について「気持ちの揺れがあったのだろう」と思いをはせつつ、「(周囲が)その考えを肯定することが問題だ」と強調。「死を選べるようにするのではなく、生きたいと思わせる態勢を整えることが先決」と訴える。
 金銭授受に疑念
 「日本ALS協会」(東京)近畿ブロック事務局長で、母親がALS患者だった水町真知子さん(72)は、安楽死が認められてしまうと「ALS患者だから(安楽死を望んでいる)とひとくくりにされてしまう」との危機感を抱く。
 「ALS患者は常に死と隣り合わせ。尊厳死や安楽死の制度化を進めると、生きたいと思っている人まで殺されてしまう危険性が生まれる」との立場で、医師らについて「安楽死を望む人の声に応えた医師の行為は認められない。金銭も受け取っていて、本当は何が目的だったのか」と話す。

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