豪雨への備え リスク低減へ具体策を講じよ
数十年に1度と言われる豪雨の被害が頻発している。治水対策や、水害に強い街造りを計画的に進めねばならない。
九州地方を襲った豪雨は、各地で河川の氾濫や土砂災害を引き起こし、甚大な被害をもたらした。気候変動による水害は、今後も各地で起こり得よう。
2018年夏の西日本豪雨を機に、政府は3年間で総事業費7兆円の対策をまとめ、堤防やダムの強化に取り組んでいる。自民党は、期間を延長して、公共事業を追加すべきだと主張する。
熊本県では、氾濫した球磨川の支流にダムを建設する計画があったが、県の反対を踏まえ、民主党政権が中止を決めた。ダムがあれば洪水を防げたのかは定かではないものの、豪雨に備える県の態勢が万全だったとは言えまい。
愛知県の設楽ダムや長崎県の石木ダムのように、ダム計画は環境への影響や費用が問題視され、工事が遅れるケースが多い。
相次ぐ災害のリスクをどう低減するのか。政府と自治体、住民が地域の実情を踏まえて真摯 に協議し、具体的な対策を講じる必要がある。堤防の決壊が起きかねない場所では、河川改修や宅地のかさ上げを急ぐべきだ。
財政の制約を踏まえれば、巨額の費用をかけて社会資本を整備するのは、限界があろう。人口減少が続く中、費用対効果にも疑問が残る。政府は事業の優先順位を考え、危険な地域を重点的に整備することが求められる。
公共事業に偏らず、防災を重視した土地活用や、避難体制の強化といったソフト面から「流域治水」を広げることも大切だ。
昨秋、台風の被害を受けた北関東では、上流からの水を田畑に逃がす対策が検討されている。
先の国会では、住民の生命に著しい危険が及ぶ恐れがある区域について、学校の設置や事業所の開発を禁止する法改正が行われた。政府は今年度予算で、浸水被害が想定される病院や老人施設の移転を補助する予算を確保した。
住宅を含めて移転を支援し、災害リスクの低い地域に生活基盤を集約する意義は大きい。
無論、住み慣れた家からの転居を躊 躇 する人は多いだろう。行政は災害の危険性を丁寧に説明し、理解を求めていくべきだ。
最近の豪雨災害では、洪水被害を予測したハザードマップと、実際の浸水域が一致する例が相次いでいる。水害リスクの情報提供や、避難施設の確保と周知を徹底していくことが不可欠だ。
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