日照不足と長雨で野菜が高騰…ニンジン3・4倍、ネギ2・4倍
野菜の値段が上がっている。本州付近に梅雨前線がずるずる居座り、日照不足と長雨が生育を阻むからという。出荷が遅れて台風シーズンに入れば、さらに高騰を招いて家計に響きかねない。(内本和希、坂場香織)
■日照時間は最短に
「ここ数年の異常気象は先が読めず、どうにも太刀打ちできん」。ジャガイモや葉もの野菜を全国に出荷する茨城県茨城町の農業法人「茨城BM」代表の清水澄さん(84)は話す。昨年10月の台風19号では7ヘクタールの畑が水浸しになり、4500万円の損害が出た。「今年こそは」と作付けしたが、6月から雨が続く。
各地で記録的な長雨となっている。気象庁によると、北海道を除く各地で6月下旬から雨が増え、今月1~21日の降水量は、静岡県三島市で625・5ミリ(平年比396%)、神戸市で414・5ミリ(同331%)、盛岡市で323ミリ(同239%)などと激増した。
日照時間も短い。今月上旬(1~10日)、東日本の日本海側では平年の25%にとどまり、1961年の統計開始以来、最短を記録。東日本全体では34%、近畿地方の日本海側では31%、東北地方南部も33%と、いずれも歴代2位の短さだった。東京都心では今月18日まで19日間連続で雨が降り、85年の15日間連続を超えた。
清水さんが育てる小松菜や枝豆は成長が遅れ、収穫量は例年より2割少ない。清水さんは「日照が乏しいので葉色は悪く糖度も低い」と日差しを待ち望む。
ニンジン出荷量が全国4位の青森県では、6月下旬~7月下旬の収穫期と長雨が重なり、生育環境が悪化した。おいらせ農業協同組合(青森県)によると、ニンジンが小ぶりだったり、傷んだりして出荷規格を満たさず、出荷量が例年の6割にとどまる日も。担当者は「雨量が多すぎて大きく育たない」と話す。
■高騰
野菜の出荷量の減少は、値段を押し上げている。
ニンジンが3・4倍、ネギ2・4倍、白菜1・4倍、小松菜は1・3倍……。東京都中央卸売市場の卸売価格(7月10~16日)は、前年に比べ軒並み上昇している。
農林水産省によると、7月上旬までは価格が持ちこたえていたが、天候不順の長期化に伴い7月中旬から上昇が目立ち始めた。農水省担当者は「天候が改善しなければ、価格の高騰が深刻化しかねない」と言う。
■台風シーズンへ
気象庁によると、8月に入れば太平洋高気圧の勢力が強まって各地で晴れの日が増え、本格的な夏を迎えそう。でも、一安心とはいかない。台風シーズンが待ち受けるからだ。東日本を襲った昨年の台風19号の農林水産被害は3446億円に上っている。
農家はどう備えるべきだろう。自然災害に詳しい毛利栄征・茨城大教授(農業土木学)は「大雨によって農地が冠水しても、素早く排水すれば収穫可能な作物もある。水路がスムーズに流れているかなど日頃から確認するだけでダメージを軽減できる」と指摘する。
0 件のコメント:
コメントを投稿