たんぱく質を積極的に…肉や魚 1食100グラム以上が目安
フレイル予防には、筋肉のもとになるたんぱく質をふだんの食事でしっかりとることが大切だ。東京慈恵医大病院の管理栄養士、赤石定典さん(50)とスーパーの売り場を歩き、どんな工夫をすれば「フレイル予防献立」になるのか、ヒントをもらった。(村上藍)
■主菜でしっかり
待ち合わせたのは、京急ストア新川崎店(川崎市)。「まずは、主菜で十分にたんぱく質をとりましょう」と力を込める赤石さん。野菜売り場で足を止めると、「キャベツやモヤシで作る野菜いためはおいしいですし、野菜が取れてよいのですが、たんぱく質が足りません」。筋肉量が落ちやすい高齢期は、たんぱく質を積極的にとる必要がある。「肉や魚、卵、乳製品、大豆製品など、たんぱく質を多く含む食材を1食100グラム以上とるのが目安です」
店内を巡って選んだ食材は、豚肉やはんぺん、卵、チーズ、豆腐など。「野菜と一緒にいためることで、たんぱく質たっぷりの料理になります。うま味が出る食材もあるので、おいしさもアップしますよ」と話す。
たんぱく質が少し足りないと思ったら、いためる時に、おからパウダーを振りかける方法も。味はほとんど変わらず、たんぱく質の量を増やせる。エビを加えてうま煮にするなど、その日の気分で楽しめる。
定番の肉じゃがやカレーライスなども、肉の量を意識して作り、卵やチーズをトッピングするとよい。
■魚は食べ方
肉をたくさん食べられないという人はどうすればいいのか。赤石さんに尋ねると、「魚でも、たんぱく質の量に大きな違いはありません。100グラムを目安に食べましょう。昼に肉、夜に魚など、バランス良く食べるといいですね」とのこと。
魚は、メニューの変化を考えるのがポイント。「同じ魚でも、味付けや調理法を変えれば飽きずにたんぱく質がとれます」。焼き魚や煮魚だけでなく、カジキを揚げ物に、エビでエビチリ、マグロと納豆を混ぜてマグロ納豆をと、バリエーションを楽しみたい。赤石さんのおすすめは、ヨーグルトとみそを1対1で混ぜたものに、魚の切り身を1晩漬けて焼いたもの。「栄養価も高く、絶品です」
スーパーの売り場にも、いろいろな魚がある。トロやブリ、サバは脂が多めで、カロリーをとりやすく、食事量が少なくなってきた人におすすめだという。
骨が気になるという人には、ちくわや魚肉ソーセージなどの練り製品、サバの缶詰など、そのまま食べられるものを。「魚はカルシウムも取れ、骨粗しょう症の対策にもなります」
■ちょい足し
主菜でたんぱく質が不足気味なら、副菜で補いたい。「みそ汁に豆腐や卵を入れたり、卵焼きやサバ缶をのせたサラダを追加したりと考えます。時間がなければ、納豆や温泉卵を一緒に食べてみては」と提案する。
とは言え、たんぱく質たっぷりの献立を毎食、考えるのは大変。麺類で簡単に済ます食事もある。「そんな時は、やっぱりトッピングです」と赤石さん。ラーメンなら焼き豚や煮卵、冷やし中華はハムや卵焼き。うどんなら卵やかまぼこを入れたい。「スーパーには、たんぱく質をプラスできる食材がたくさん並んでいます。卵やチーズは、冷蔵庫に常備してほしいですね」
たんぱく質は、飲み物やおやつでも。「お茶や水より、カフェオレやミルクティーなどを。コーヒーや紅茶に牛乳や豆乳を混ぜて、簡単に作れます」。食事でなくても、たんぱく質は食べられる時に、少量ずつとればいいそうだ。「おやつのお煎餅をサンドイッチやゆで卵、枝豆などに変えるのもオッケー」という。
食べやすい味付けに
夏場のフレイル予防の献立作りで活躍するのが、豚肉だ。「糖質をエネルギーに変えてくれるビタミンB1が多く含まれています。そうめんやアイスクリームなど糖質をとりがちな季節に、特におすすめです」と赤石さんは解説する。豚肉を、タマネギやニラと一緒にとると、ビタミンB1の吸収がよくなるという。
ただ、これからの季節は暑さで食欲も低下しやすい。たんぱく質をとれる料理が並んでも、あまり食べられないのではもったいない。「味付けや調理方法で、食べやすく工夫することも考えてほしい」という。
例えば、豚肉を使ったいため物を作る時、「相性のよいニンニク風味や、食欲をそそるピリ辛の味付けにしてみては」とアドバイスする。スパイスの刺激で食が進みやすいカレー粉を使って仕上げるのも手だ。
いため物を食べたくない時は、しゃぶしゃぶ用の豚肉と野菜を一緒に蒸して、ポン酢やごまだれに少しの七味唐辛子で味付けしたもので食べるのも、さっぱりしておいしい。
冷たいスープで、たんぱく質を補う方法もある。「市販の粉末コーンスープを冷蔵庫の牛乳で作れば、コクも加わります」
◆フレイル=「健康」と「要介護」の間にある心身の調子が崩れた状態。「虚弱」を意味する英語「frailty(フレイルティ)」が語源で、65歳以上の1割が該当し、75歳以上で大きく増えるとされる。
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