2020年7月24日金曜日


現在単身赴任中の50代男性。定年を間近に控えながら20代息子は独立できず、高齢の母親もおり今後やっていけるのか心配とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。© All About, Inc. 現在単身赴任中の50代男性。定年を間近に控えながら20代息子は独立できず、高齢の母親もおり今後やっていけるのか心配とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。

定年まであと2年。20代長男、母親を抱える可能性もありこれからやっていける?

皆さんから寄せられた家計の悩みにお答えする、その名も「マネープランクリニック」。
今回の相談者は、現在単身赴任中の50代男性。定年を間近に控えながら20代息子は独立できず、高齢の母親もいて今後やっていけるのか心配とのこと。ファイナンシャル・プランナーの深野康彦さんがアドバイスします。
▼相談者小鉄さん(仮名)
男性/会社員/58歳
東北/借家
▼家族構成単身赴任中。妻(56歳)と社会人の長男(20代)が他県にて同居
▼相談内容長男が就職したものの、介護職で年収200万円に届かず、独立できない状態。また、他県実家で一人暮らしの実母は、要支援2で今後介護の必要が発生する可能性大。
2年後に定年を迎え、その後は家族で同居して嘱託社員として働く予定だが、年収の見込みは現在の半分以下となる。長男と母の今後を考えると、最悪両者の経済的負担がかかってくる可能性もあり、今後の家計をどう考えるべきかアドバイスをお願いしたい。
▼家計収支データ小鉄さんの家計収支データは図表のとおりです。
相談者「小鉄」さんの家計収支データ© All About, Inc. 相談者「小鉄」さんの家計収支データ ▼家計収支データ補足(1)ご家族について
他県にある実家で一人暮らしの実母は84歳。定年後は家族3人で同居ということで、母親との同居は今のところ予定していない。要介護となった場合は施設に入居予定。
(2)収支について
息子は一緒に暮らしているが、家計に直接お金は入れていない。妻は専業主婦で体が弱く、パートも無理。
単身赴任の生活費6万円の内訳としては、土日は実母が一人で住む実家に帰って世話をしつつ一緒に過ごし、食費として母に1万円あげている。食費2万8000円、水道光熱費1万3000円、雑費9000円、これで合計6万円。
(3)住宅費について
住宅費5万6000円は、妻と息子が暮らすアパート代。相談者は会社の借り上げ社宅で負担ゼロ。
(4)加入保険について
・本人/生命共済(終身タイプ、60歳払い込み終了、死亡保障2000万円)=毎月の保険料1万2000円
・本人/医療共済(80歳払い込み&保障終了、入院5000円)=毎月の保険料4000円
・自動車の任意保険=毎月の保険料7000円を保険料に含めている。
(5)車両費について
車の所有台数は1台。車のローンなし。定年後家族が同居を始めるタイミングで買い替えを考えており、想定は200万円。
(6)食費について
食費4万円は、妻と息子の分。本人の食費は上記単身赴任の生活費に含まれている。
(7)教育費について
教育費1万6000円は、金融公庫から借りた資金の返済であと3年。
(8)ボーナスについて
ボーナスの主な使い道は貯金40万円、旅行20万円、車両の税金や車検20万円、その他家電買い替えや雑費60万円
(9)年金について
本人:65歳から受給した場合170万円/年額
(10)今後について(相談者コメント)
単身赴任は定年までの1年9カ月の予定です。嘱託社員として65歳まで働くつもりでいます。退職金は1000万円くらいになると思います。
3人きょうだいで男は私1人、姉妹は家を出ているため、実家は私が相続するのだろうと思います。財産はよくわかりませんがたいしてなさそうです。
2年後は、妻と息子が暮らしている他県のアパートは引き払って、定年後、私が嘱託で赴任する地にアパートを借りて住むつもりです。
仮に母が住む地に赴任しても、同居はありません。更地にして売りに出すか、決めかねています。どちらの場合もいくらかかるのか想像もできないので。築年数は50年で、住むとすれば大規模リフォームは必須です。固定資産税は、うろ覚えですが、確か年間7万円程だったかと思います。
▼FP深野康彦の3つのアドバイスアドバイス1:60歳までラストスパートであと320万円増やそう
アドバイス2:65歳まで嘱託で頑張り、貯蓄の取り崩しを先延ばしにする
アドバイス3:お母さんの介護は兄弟姉妹で金銭負担の分担を考える

アドバイス1:60歳までにラストスパートであと320万円増やそう

定年まであと2年足らずということで、老後資金作りもラストスパートの時期を迎えている小鉄さんは、もうひと頑張りして貯金を増やしておきたいところです。現在単身赴任中で、二重生活になっているため大変だと思いますが、もう少しなので頑張りましょう。
加入している生命保険は60歳で払い込みが終わる予定なので、あと少しの期間分を払い済みにしてしまいましょう。そうすると月々10万円を貯金できるようになります。あと1年9カ月あれば月々の貯蓄で210万円貯まります。
それにボーナスがあと3回もらえると思いますから、1回あたり70万円としてその半分は貯蓄に回したいですね。それができると、定年を迎えるまでに約320万円新たな貯蓄ができることになります。
定年を迎えた後は65歳まで嘱託で働く予定とのことなので、その間をなんとか25万円の支出に抑えたいところです。保険料の支払いがなくなって、教育費は奨学金があと3年とのことなので、定年後も1年ちょっと返済が残りますが、それが終われば奨学金返済分もなくなり支出は減るはずです。
現在単身赴任をしているため生活費が二重にかかっていますが、ご家族で一緒に暮らせるようになれば、食費や雑費なども減らせるでしょう。

アドバイス2:65歳まで嘱託で頑張り、貯蓄の取り崩しを先延ばしにする

嘱託社員で収入が減ってしまうかもしれませんが、300万円程度稼げて、月25万円の支出に抑えられれば、貯蓄を取り崩さずにやっていけます。そうすればこれ以上貯蓄を増やせなくても、年金をもらうまで手持ちのお金が減ることはないので心配いりません。

小鉄さんの場合には、65歳以降は170万円の年金が受け取れる予定です。奥さんはデータがありませんが、40~50万円もらえるとして2人あわせて210~220万円程度でしょうか。
65歳以降もまだ仕事ができるようでしたら、年に100万円程度でも構わないのでアルバイトなどでもいいですから、収入が確保できるといいですね。
そうすると年金と合わせて年300万円をキープできるので、その収入が確保できている間は貯蓄を取り崩さずにがんばれますよ。貯蓄の取り崩しをできる限り先に延ばせると、その後の安心感が違います。

アドバイス3:お母さんの介護は兄弟姉妹で金銭負担の分担を考える

お母さんのお世話もしているとのことですが、金銭的な援助が発生していないのであれば、いまできる範囲で面倒を見てあげるのは良いと思いますよ。本当はお母さんと同居できれば家計的には一番いいと思いますが、その点はいろいろとお考えもあるでしょうから、ご家族で話し合って決めてください。

ただし、今後、金銭的な援助が必要となった時には、ごきょうだいと話し合って3人でお金を出し合わないと厳しいでしょう。小鉄さんが一人ですべての金銭負担を背負わないようにしてください。どうしてもごきょうだいがお金を出せないということなら、同居して家計の負担をなるべく増やさないようにするしかありません。
長男は、介護職に就いているようなので、お母さんの介護が必要になった時に面倒を見てお金を入れる代わりに介護を手伝ってもらえないか話してみてはいかがでしょうか。
それと払い済みにすることをお勧めした生命保険は、終身部分の保障額がデータからはわかりませんが、たぶん数百万円はあるはずです。これはいざという時に解約すれば現金を手にできるので、最後の切り札として、残しておくといいですよ。

相談者「小鉄」さんから寄せられた感想

今回は大変ためになるアドバイスをいただき、ありがとうございました。定年を境に我が家の生活は環境も経済状況も激変が予想され、大変不安でしたが、具体的な数字をあげていただいた上での対処の仕方は、十分参考になりました。

母親と実家の問題は不確定な部分が多いですが、できることを積み重ねた上で、家族で協力して対処していこうと思います。
教えてくれたのは……深野 康彦さん
マネープランクリニックでもおなじみのベテランFPの1人。さまざまなメディアを通じて、家計管理の方法や投資の啓蒙などお金周り全般に関する情報を発信しています。All About貯蓄・投資信託ガイドとしても活躍中。

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