2020年8月13日木曜日

 

水分補給のタイミングと、飲料の使い分けも大切です(写真はイメージです) Photo:PIXTA© ダイヤモンド・オンライン 提供 水分補給のタイミングと、飲料の使い分けも大切です(写真はイメージです) Photo:PIXTA

今年の夏は例年以上の猛暑予想

熱中症リスクがより高まっている

 外出自粛による、いわゆる「コロナ太り」の解消のためにも、夏に向けてダイエットを考えている人も多いのではないでしょうか。そんななか、気象庁によれば、今年の8月は例年より気温が高くなると予想されています。つまり、例年以上に「熱中症」の危険性が高まるということです。とくにランニングなど、屋外での運動には要注意。正しい熱中症対策を知っておくことが大切です。

 まず知ってほしいのは、熱中症を甘く見てはいけないということ。熱中症は、高温多湿の環境に長くいることで体内の水分や塩分のバランスが崩れて体温調整機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもることによって、めまい、頭痛、けいれんなどを引き起こす病気です。しかも、最悪の場合は死に至ることも。近年は猛暑と呼ばれる年が多く、2010年代はそれ以前と比べて熱中症による死亡者数が増加傾向にあります。厚生労働省によれば、2018年に日本で熱中症によって亡くなったのは1581人にものぼります。熱中症は、それだけ「怖い病気」なのです。

 熱中症を引き起こす要因は、「環境」「体」「運動」の大きく3つに分類されます。

◆熱中症の要因1【環境】

 具体的には、高い気温や湿度、強い日差し、エアコンのない室内などの環境が挙げられます。注意してほしいのは、気温だけで熱中症の危険性が決まるわけではないということ。熱中症の危険性は、気温、湿度、輻射熱(ふくしゃねつ)の組み合わせによる「WGBT」という暑さ指数によって表されます。ただ、一般的にいちばん分かりやすい指標といえば、やはり気温ということになるでしょう。そこで、運動をするときには、下記に示す気温の違いによる注意点を意識してください。

【気温の違いによる運動の注意点】

・24℃未満 熱中症の危険性は低い。適宜、水分を補給する。

・24〜27℃ 熱中症の危険性がある。積極的に水分・塩分を補給する。

・28〜30℃ 30分おきに休憩を取り、積極的に水分・塩分を補給する。

・31〜34℃ 激しい運動は避ける。10〜20分おきに休憩を取り、積極的に水分・塩分を補給する。

・35℃以上 原則として運動は中止する。

熱中症の要因である「体」と「運動」

コントロールできるものをきちんとコントロールする

 熱中症の3つの要因のうち、「環境」については、とくに屋外にいる場合にはなかなか自分でコントロールできないものです。そのため、先に書いた気温による注意点を意識することが大切。一方、熱中症の3つの要因の残りの2つ、「体」「運動」については、自分でコントロールできるものですから、知識さえ持っていれば、よりしっかりと熱中症対策ができるはずです。

◆熱中症の要因2【体】

 熱中症のリスクが高いのは、高齢者や子どもはもちろんのこと、肥満、二日酔い、睡眠不足、運動不足、脱水状態の人です。また、食事量が少ない状態であることや、朝食を抜くことも熱中症のリスクを高めます。水分をとるというと、どうしても飲みものをイメージしがちです。でも、ごはんや野菜などの固形物も重量の半分以上が水分ということがほとんどです。食事をしっかりとることも、熱中症の予防になるのです。

◆熱中症の要因3【運動】

 運動中は、とくに発汗によって体内の水分と電解質(塩分やカリウムなど)が失われます。そうして水分補給が追い付かず脱水状態になると、発汗による体温調整機能が低下し、熱中症になりやすくなる。気温がどんどん上がっていくこの季節には、屋外など高温多湿の環境下での運動はなるべく避けて、ジムなど空調の効いた室内で行うことをおすすめします。

水分が体に吸収されるまでには時間がかかる

「早め早め」の水分補給を心がけて!

 熱中症を回避するための水分補給の重要性はいうまでもないことですが、ここでは運動中における水分補給の方法について解説します。人体の60%は水分でできているということを耳にしたことがある人も多いでしょう。しかも、その水分がわずかでも不足してしまうと、人間の体は不調をきたしてしまう。それだけ水分はわたしたちの体にとって重要なものであり、とくに発汗で水分が失われる運動時にはその補給が大切になります。運動時には、下記の目安を意識してしっかり水分を補給してください。

【運動時に必要な水分量の目安】

・運動前 30分前に250〜500ml。

・運動中 15〜20分おきに200〜250ml。1時間で500〜1000ml。

・運動後 運動後1時間くらいは運動中と同じようにこまめに飲み、運動前との体重変化を2%以内に収める。

 ただ、これはあくまで目安と考えてください。というのも、必要な水分量は、運動の内容や気温、個人の体調などの条件によって大きく違いが出てくるため、「この量を飲めば大丈夫!」という明確な基準は無いからです。

 中でも運動中は最大限の注意が必要です!日常的な水分補給については、「喉が渇いたな」と感じたら水を飲めば問題ありません。しかし、運動中は、「喉の渇きを感じてから水分補給したのでは、発汗で失った水分を十分に補えない」ことが分かっているのです。

 水分補給をしても、体に吸収されるまでにはある程度の時間がかかることがその要因の一つ。気温が高い時期には、自分でも気づかないうちに脱水が進んでいるものです。早め早めの水分補給を心がけましょう。暑い中での運動時には、水分補給についてどれだけ意識しても意識し過ぎるということはありません。

運動の内容やタイミングによって

スポーツドリンク類を使い分ける

 また、運動時には、塩分が含まれた飲みもので、水分だけではなく汗で失われた電解質も補給しましょう。汗をかいたときに水分だけを大量にとると、体液が希釈されて起こる低ナトリウム血症を引き起こしてしまう可能性もあるからです。その「塩分が含まれた飲みもの」とは、いわゆるスポーツドリンクなど。それらは、体への吸収のされやすさ(浸透圧)などの違いによって、下記の3つに分類されます。

◆アイソトニック飲料

 平常時の体液と同じ浸透圧の飲料です。塩分のほかに運動中のエネルギーとなる糖質が含まれているため、運動前に飲むのに適しています。ただ、糖質の過剰摂取には注意しましょう。市販品では、「アクエリアス」や「ポカリスエット」がこれにあたります。

◆ハイポトニック飲料

 体液より浸透圧が低いため、アイソトニック飲料と比べてより速やかに水分や電解質が体に吸収される飲料です。加えて、アイソトニック飲料より糖分が少なくカロリーが低いものが多いこともあり、運動中や運動後に飲むのに適しています。「アミノバリュー」「イオンウォーター」などの市販品があります。

◆経口補水液

 ハイポトニック飲料と同様に体液より浸透圧が低く、より脱水状態の改善を目的とした飲料です。そのため、アイソトニック飲料やハイポトニック飲料など、スポーツドリンク類よりも電解質の濃度が高いという特徴があります。大量の汗をかくようなハードな運動中や運動後に脱水状態の改善のために飲むのに適しています。市販品には、「オーエスワン」「アクアソリタ」などがあります。

 熱中症は誰もがかかる可能性のある病気ですが、一方で、しっかりと対策をすれば防ぐことができる病気でもあります。この夏は、日常的にマスクをしていることで水分補給の頻度を減らしてしまい、脱水症状に陥る人が増えることが懸念されます。熱中症のリスクが高まっている状況にあることをしっかりと意識して、例年以上に水分補給、塩分補給などの熱中症対策をしてください。

(管理栄養士、パーソナルトレーナー 西巻草太)

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