2020年8月13日木曜日

社説

香港弾圧の強化 国安法で民主派がつぶされる


 法律の恣意しい的な運用や報道機関の厳格な管理を通じて、異論を封じ込める。中国が本土での統治手法を香港に持ち込み、民主派をつぶす狙いが露骨に表れたと言える。 香港警察は、民主派勢力の有力者を国家安全維持法(国安法)違反の疑いで相次いで逮捕した。

 中国や香港政府に批判的な香港紙・蘋果日報の創業者、黎智英氏は、本社の捜索にも立ち会わされた。警察は記者の取材資料なども調査したという。心理的に威圧する狙いは明白だ。

 国安法を使った報道機関への圧力は、断じて容認できない。香港メディアでしゅくや自己検閲が強まる事態が懸念される。

 民主活動家の周庭氏も逮捕された。流暢りゅうちょうな日本語で支持を呼び掛けるなど日本でも知名度が高い。黎氏と周氏は保釈されたものの、当局は2人を狙い撃ちにし、民主派勢力全体をけん制する効果を計算しているのだろう。

 国安法が6月末に施行されてから、2か月もたっていない。運用がこれほど素早く、かつ強引であることは衝撃である。

 問題なのは、逮捕理由が不透明であることだ。黎氏も周氏も、中国による香港の自治の侵害を海外に訴えてきたが、国安法施行後は目立った活動はなかった。

 国安法は「外国勢力と結託して国家安全に危害を加える」行為を禁じているだけで、具体的な内容は示していない。法の曖昧な規定を悪用しているのではないか。

 中国の「一国二制度」下にある香港では、言論の自由が認められてきた。1984年の中英共同宣言に基づく国際約束である。中国はその重みを認識し、厳しい国際世論に耳を傾けねばならない。

 欧州連合(EU)は「表現の自由や報道の自由の息の根を止める目的で国安法が利用されている」と批判した。菅官房長官も「重大な懸念」を表明した。

 中国は菅氏の発言に「内政干渉」と反発したが、筋違いだ。

 基本的自由の尊重は国連憲章で明記されており、1993年の「ウィーン宣言」は、全ての人権の促進、保護は「国際社会の正当な関心事」と強調している。

 香港が国際金融センターとして発展してきたのは、「一国二制度」による言論の自由や「法の支配」があったからだ。これらが形骸化すれば、外国企業の活動の基盤が崩れ、金融都市の地位は沈下していくだろう。

 中国は、香港がその瀬戸際にあることを自覚すべきだ

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