2020年8月13日木曜日

 

【甲子園交流試合】「白スパイク解禁」10度低い実験結果も、選手「黒には戻れない」© 産経新聞社 【甲子園交流試合】「白スパイク解禁」10度低い実験結果も、選手「黒には戻れない」

 10日から兵庫県西宮市で開かれている「2020年甲子園高校野球交流試合」で、高校球児たちの足元に「異変」が起きている。白色のスパイクを履く選手が増えているのだ。従来のルールで認められていたスパイクの色は黒色の一色だけだったが、今年3月から熱中症対策として白色が“解禁”された。白色は黒色よりも温度が下がるとの実験結果も出ており、使用する選手からは「もう黒色のスパイクには戻れない」との声も上がっている。

黒色より10度も低く

 高校野球で使用できる道具について日本高野連が定めたルール「高校野球用具の使用制限」にはこれまで「(公式戦のスパイクは)表面は黒一色とし、エナメルおよび光沢のある素材は使用できない」などと記されていた。しかし近年は夏の猛暑が続いていることなどから、日本高野連は昨年5月に開いた理事会で、熱中症対策として白色の使用も認めることを決めた。

 これを受け、スポーツ用品メーカーも本格的に白色スパイクの製造に着手。大手のミズノ(大阪市)は昨年8月、自社製品で従来の黒色と白色のスパイクについて温度の上昇具合の違いを調べた。気温32度でスパイクの内部と表面温度の変化を1分ごとに記録。その結果、白色は黒色に比べ、内部、表面ともに約10度低くなっていたという。白色のスパイクを「白スパ」の名称で販売する同社の担当者は「白色(まだ何色にも染まっていない)=始まり、と考え、新たな気持ちで高校野球の第一歩を後押ししていきたい」と話す。

【甲子園交流試合】「白スパイク解禁」10度低い実験結果も、選手「黒には戻れない」© 産経新聞社 【甲子園交流試合】「白スパイク解禁」10度低い実験結果も、選手「黒には戻れない」

涼しい感覚が人気

 白色のスパイクが使用できるようになったのは今年3月からだが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、春の選抜大会と夏の選手権大会が中止に。その結果、今回の交流試合が甲子園球場でのお披露目の場となった。

 交流試合では、昨秋の近畿大会を制した天理(奈良)、同大会4強の智弁学園(同)、四国大会優勝の明徳義塾(高知)などの強豪が白色のスパイクを導入。17日登場の大阪桐蔭(大阪)も大阪府の代替大会で既に使用しており、交流試合でも使う見込みだ。

 「黒色のスパイクは熱を持つが、白色は涼しい感覚があった」と智弁学園の白石陸主将。天理の河西陽路選手も「白色はスパイクの中が涼しく感じる。もう黒色には戻れない」と感想を話した。一方で、鹿児島城西(鹿児島)の林誠人選手は「足が軽い印象で、走りやすい」と涼しさ以外の「効果」も口にする。

 白色は、ひたむきに白球を追う球児のイメージとも重なる。高校野球に白色スパイクのブームが訪れるかもしれない。

コロナと熱中症の両方をケア

 交流試合では、連日の猛暑に加え、新型コロナウイルスの感染にも注意を払わなければならない。「ウィズ・コロナ」の中、新たな熱中症対策も導入されている。

 ベンチ内での水分補給は、昨年の甲子園大会までは背番号を書いたコップを使っていたが、飛沫が水や飲み口に付着するのを防ぐため、今回はペットボトルに変更。900ミリリットル入りを2本用意し、1イニングごとに200ミリリットルを目安に飲み切る。ペットボトルを握ることで「手掌冷却」ができ、深部体温の上昇を抑制する効果もある。

 また、熱中症の症状が見られる選手のために、一、三塁側のベンチ裏には氷水を入れた浴槽「アイスバス」を設置。体を内部から冷やすためシャーベット状の氷飲料も取り入れた。

 甲子園大会の熱中症対策は平成7年から、理学療法士らで構成される一般社団法人「アスリートケア」(大阪市)が日本高野連の要請を受け、行ってきた。同法人の担当者は「新型コロナウイルスの感染予防と熱中症対策を両立させながら、万全の体制で選手たちをサポートしたい」と話している。

(岡野祐己、宇山友明)

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